【取材の裏側 現場ノート】2009年、デンマークで行われた国際オリンピック委員会(IOC)総会を取材していた時のことだ。私とアルゼンチンの記者、イタリアの記者がたまたま同じ場にいて、自己紹介が始まった。私以外の2人が互いの出身国を知った時、あいさつ代わりに発した第一声が非常に興味深かった。
「お~! マラド~ナ~!」
「ロベルト・バッジョ~!」
「こんにちは」でも「はじめまして」でもない。お互いに国を代表するサッカーレジェンドの名前を叫び、一瞬にして2人は笑顔に。ぎこちなさもなく、すぐに親しくなっていた。東京の2016年五輪招致のために取材していたが、サッカーの浸透力、影響力の大きさを実感した。
カタールW杯は実に50億人が視聴したともいわれている。今ならアルゼンチンの記者に対しては間違いなく「リオネル・メッシ~」と声がかかるだろう。
残念ながら、あの時アルゼンチンの記者もイタリアの記者も、私には日本のサッカー選手の名前を呼びかけてはくれなかった。当時より海外で活躍する選手が増え、カタール大会ではドイツ、スペインを倒し、クロアチアも苦しめ2大会連続となるベスト16入りを果たした日本。今、同じ状況となったら、あいさつ代わりに誰かの名前を挙げてくれるのかな、と想像している。
(スポーツ担当・中村亜希子)









