プーチン大統領が〝ウソ〟をつかなければ、ロシア軍の士気を保てないようだ。ロシア国防省は8日、クラマトルスクでウクライナ軍の兵舎2か所をミサイル攻撃し計600人以上を殺害し、〝報復作戦〟を実施したと発表。しかし、ウクライナ軍報道官は同日、同国東部ドネツク州クラマトルスクでロシア軍の攻撃を受けたのは民間のインフラ施設で「ウクライナ軍は被害を受けていない」と否定した。ロイターの記者が現場を訪れ、ウクライナ軍の陣地が破壊されていないことを確認した。

 英紙エクスプレスは9日、「クレムリンが600人以上のウクライナ兵を殺害したと主張したが、ロシアの砲撃は目標を逃した。現場の写真によってロシアの情報は間違いだと照明された」と報じた。なぜ、ロシア軍が見え見えのウソを流したかというと、プーチン氏が部分的動員令を出し、徴兵した兵士が装備不足で死亡し続けており、国民から反発を受けているからだという。

 ロシアの〝報復作戦〟とは、元日にウクライナ東部ドネツク州の州都ドネツク北東にあるマケエフカにあるロシア兵舎がウクライナ軍のハイマースで攻撃され、ロシア軍の発表で89人、ウクライナ軍の発表でロシア兵400人が死亡したことに対するものだ。昨年2月24日にウクライナ侵攻が始まって以来、最大のロシア兵の人命が奪われた攻撃だった。

 しかし、今回の〝報復作戦〟について、ウクライナ側は「ロシアが週末の攻撃の犠牲者についてウソをついている」と非難。ウクライナ軍のスポークスマンであるセルギー・チェレバティ氏も「ロシアのプロパガンダだ」と主張している。

 実際、国際メディアグループのロイター社の2人のジャーナリストがウクライナ兵舎を訪れ、建物が残っていることを確認した。別の民間の建物が破壊されていたようだ。人的被害はなかったという。

 それでも、国際報道をシャットアウトしているロシア国内では〝報復作戦〟は成功したという扱いになっている。それでも、一部のロシア人はSNSで「ロシア政府が情報を隠蔽している」と指摘しており、オンラインの嘆願書には死亡した兵士の完全なリストを公開するよう要求する約4万6000の署名が寄せられているそうだ。

 ロシアのSNSテレグラムでは、数十人の女性が戦争に反対するキャンペーンを開始。エレナという名前のロシア女性は「3人の息子がロシア軍に徴兵され、攻撃が行われて以来、ロシアの当局者から何の連絡も受けていない」と動画で語った。