ウクライナ国営テレビの女性司会者アナスタシア・ブリシチクさん(23)は、婚約者がロシア軍との戦争で死亡したため、自ら司会者をやめて兵士になった。そんな愛と復讐の物語を英紙メトロが19日までに報じた。

 ロシアとの最前線にいたウクライナ兵士オレクサンドル・マホフ氏(36)は4月6日、フェイスブックで、片膝をつき、指輪の代わりに手りゅう弾を差し出すプロポーズ動画をアナスタシアさんに送った。答えはイエスで、婚約が成立。アナスタシアさんはうれしさのあまり、その動画を自らのインスタグラムにアップした。しかし、5月4日、マホフ氏はハリコフ東部地域の領土を奪還するための戦闘で、ロシアの砲撃により死亡してしまった。

 アナスタシアさんは軍事ジャーナリズムを専門とするテレビリポーターから、国営テレビの司会者に転身したばかりだった。今は司会者の仕事を辞め、兵士に転身。ドネツク州東部バフムート近郊で戦っている。

 アナスタシアさんはメトロ紙にこう語った。「2月24日のロシアの侵略は私のすべてを奪っていきました。オレクサンドルと一緒に旅行したり、カルパチア山脈でスノーボードをしたり、映画を見に行ったり、週末にはピクニックをしたりしました。しかし、2月22日、彼から『近いうちに戦場に行かなければならない』と電話がありました」

 プロポーズを振り返った。「私は『もちろん、はい!』とコメントを書き込みました。結婚指輪の代わりに手りゅう弾の指輪を手に入れました。でも、5月9日、私は婚約者の棺を抱きしめることになりました。彼の犠牲は無駄ではありませんでした。数か月後、ウクライナ軍は急速な反撃で、入植地とほとんどの州からロシア軍を追い出しました」とアナスタシアさん。

 現在は兵士としてハリコフ旅団に加わっている。婚約者をたたえる最善の方法は戦場にいることと判断したからだ。

 アナスタシアさんは兵士だが、戦場ジャーナリストを戦闘地域に導き、彼らの取材の手配をし、地雷やその他の危険から保護する報道官としての役割も果たしている。また、戦争におけるメディアの役割と、ロシア軍によるジャーナリストの殺害と負傷の疑いを取材しているという。

 いつの日か、婚約者の出身地であるルガンスク州でウクライナ国旗を掲げることを望んでいる。

「彼の死後、私を支えたのはたった一つの考えだけでした。私は、戦争を終わらせることができなかったオレクサンドルの代わりに、ウクライナが勝利するまで兵士として戦います」(同)

 アナスタシアさんは、ロシア軍が敗北し、ウクライナ人がもはや戦わない未来を思い描いている。