事実上更迭された山際大志郎・前経済再生担当相の後任は、25日中に決まる見通しだ。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との接点が次々と発覚し、この間“記憶にない”などとした数々の答弁が国会を紛糾させ、24日の辞表提出に追い込まれた山際氏。「瀬戸際大臣」ともやゆされた山際氏の退場は、岸田文雄首相が力を入れる経済安全保障政策を進める“安倍―甘利―岸田ライン”の主要メンバーの“消滅”も意味する――。

 野党側からは“遅きに失した”と評される山際氏の辞任。旧統一教会との接点について「報道を見る限り(関連団体のイベントに)出席したと考えるのが自然だ」「私が出席している写真が(教団ホームページに)掲載されており、私も出席を確認した」、記憶が「おぼつかない」などと語録ができそうな珍答弁を繰り返し、事実上の更迭に至った。

 山際氏は8月10日の内閣改造で経済再生担当相の留任が決まった当時から、教団との接点が次々と判明し、野党の追及を受けてきた。岸田政権発足後、不祥事による閣僚辞任は初めて。岸田首相も任命責任を認めざるを得なかったが、山際氏が内閣を去ることにより、岸田首相もかねて力を注いできた経済安全保障政策での主要メンバーが政権と与党自民党幹部からいなくなった。

 ネット上では「経済安全保障は『岸田―甘利―山際―コバホーク』の自民党新国際秩序創造戦略本部発のはずだが…」などと、この数年、主に対中国を念頭に置いて進められてきた経済安全保障への影響を指摘する投稿がみられる。サプライチェーン(供給網)の強靱化や重要物資の確保など多岐にわたり、岸田首相が党政調会長時代の2020年6月、新国際秩序創造戦略本部が設けられた。

 同本部では当時、岸田氏が本部長に就任。かねて経済安保の重要性を唱えていた甘利明・元経済再生相が座長、幹事長を山際氏、事務局長を前出の「コバホーク」こと小林鷹之衆院議員が務めていた。

 その後、昨年の党総裁選で甘利氏が選対顧問に就いた岸田氏が当選し、首相に。甘利氏は党幹事長、小林氏が経済安保担当相、山際氏が経済再生相に起用された。新国際秩序創造戦略本部の主要メンバーが政府と党の要職に就いた形。山際、小林氏は甘利氏と近い関係だった。経済安保の重要性は甘利氏盟友の安倍晋三元首相も認めるところだったため、いわば“安倍―甘利―岸田ライン”が形成されたことになる。

 ところが、甘利氏は昨秋の総選挙で党幹部として小選挙区落選の屈辱を味わい、幹事長を辞任。安倍氏は凶弾に倒れた。小林氏にスキャンダルはないが、内閣改造で高市早苗氏と交代。今回の山際氏の辞任で、前出のメンバーは軒並み消えた。

 岸田首相を悩ます目下の経済情勢は、円安や物価の高騰、資源・エネルギー確保の問題だが、世界の二極化分断が深まる中、経済安保も重要課題であることに変わりはない。

 山際氏は、新興企業支援を進める「スタートアップ担当相」も兼ねていた。首相肝いりの「新しい資本主義」における重点分野の一つが、スタートアップ。これも主(あるじ)が代わることになり、山際氏問題は、旧統一教会問題で迷走する岸田政権を象徴するかのような騒動だった。