【取材の裏側 現場ノート】J2横浜FCの元日本代表MF中村俊輔(44)が18日に現役引退を発表した。「ファンタジスタ」と呼ばれたように華麗なテクニックを武器に活躍し、セルティック(スコットランド)時代には欧州チャンピオンズリーグ(CL)でマンチェスター・ユナイテッド(イングランド)から得意のFKでゴールを奪取するなど、その名を世界に知らしめた。
記者は俊輔がセルティックに所属していた当時の2006年3月にスコットランド・グラスゴーで取材する機会に恵まれた。曇天の中で行われたトレーニングでは、ぬかるんでボコボコになったグラウンドでパスが来るたびに〝ピタッ〟と足元にボールを止めていたのは俊輔だけだった。その練習後、10番を背負う日本のエースとして臨む同年のドイツW杯に向けた取り組みなどについて聞いたが、中でも印象深かったのはアスリートの心理面について研究していたことだ。
俊輔は「サッカー選手の自伝とか、海外の選手も含めて割と読みあさったから、最近は他競技の方がどんな考えを持っているかに興味があって野球のイチローさんとかの本を読んでいる。どんなことを思ってプレーしているのとかね。それに最近は団体競技はなんとなくわかるから、個人競技の選手がどんな心理状況なのか。そういう本も見ている」と語っていた。
選手としてテクニックやピッチ内のプレー面にもついても熱心に研究していると同時にメンタル面も詳細に分析。競技の枠を超えて、どんな心理で臨んでいるかを学ぶことで、自身のプレーに生かそうとしていた。特にサッカー以外の競技やアスリートが大一番に挑むときの心構えや普段の取り組みを知ることで自身のパフォーマンスの幅を広げていたようだ。
実際に、日本代表の活動中の取材でも「こういう動きをしたら相手はこう考えるだろうから…」「一瞬だけゴールの上の方を見て、そこを狙うと相手に意識させると、空いているコース以外にも気を配らなきゃいけなくなるから」など、巧みに敵選手の心理を読み解くコメントを発していたように、効果的なプレーにつなげていた。
俊輔以外のサッカー選手がメンタルなど研究に取り組んでいないわけではないものの「日本の10番」を背負う選手として人一倍、常に貪欲だった。他にもサッカー選手には珍しく試合中でも前髪をたらしていたのは目線で相手に動きを悟られないためで、海外遠征の際には、どんな環境にも対応できるように毎回20足以上ものスパイクを持ち込んでいた。
今後は指導者を目指すことになるが、これまで以上に多くの分野から学ぶことで日本を代表する「名将」になってくれるはずだ。
(サッカー担当・三浦憲太郎)











