まだまだ残暑が続くが、もう9月も目前。そこで今週は、去り行く夏を惜しみつつ「今、見ておきたい夏の映画」を特集する。海外ドラマ評論家、映画ライターとして活躍する池田敏氏が、本紙読者にオススメの「夏をテーマにした名作5本」を紹介してくれた。

【大人になるために…】「ビッグ・ウェンズデー」1978年・米国(ブルーレイ6589円(税込)発売元:ワーナー・ブラザース 販売元:NBC ユニバーサル)
 
 1962年夏のカリフォルニア。若いサーファー3人、マット(ジャン=マイケル・ビンセント)、ジャック(ウィリアム・カット)、リロイ(ゲイリー・ビジー)は毎日を楽しく過ごしつつ、水曜日にやって来るという伝説の大波「ビッグ・ウェンズデー」に乗る日を夢見る。

 しかし現実は厳しく、彼らは激動の時代の渦中へ。3人の周囲では、ベトナム戦争で戦死する者がいる一方、安定を求めて退屈な日常を選んだ者もいるなど、3人は理想と現実の間に挟まれて苦悩する。そして74年の夏、再会した3人はついにやって来た「ビッグ・ウェンズデー」に立ち向かう。いつ来るか分からない大波は、まるで青春の象徴のよう。波のように押し寄せては返す万感。「ビッグ・ウェンズデー」は彼らが大人になるために避けて通れない儀式だったのだ。

 美しい夏の風景とともにまぶたに焼き付く、青春の鎮魂歌というべき感動の名作だ。

ITChapterTwo(C)2019WarnerBros.Entertainment Inc.Allrightsreserved.
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 【あの恐怖の夏から27年後】「IT/イット “それ”が見えたら、終わり。」2019年・米国(デジタル配信中 ブルーレイ2619円(税込)発売元:ワーナー・ブラザース 販売元:NBC ユニバーサル)

 人気作家スティーブン・キングの小説「IT」を映画化した2部作の後編。まずは前編「IT/イット “それ”が見えたら、終わり。」を見てから楽しもう。

 田舎町に出現した、ピエロのような姿の殺人鬼「ペニーワイズ」(ビル・スカルスガルド)と「ルーザーズクラブ」の少年少女が戦ってから27年後。何と新たな連続児童失踪事件が起き、町を出たメンバーを含むかつての仲間たちは、27年前の約束を果たそうと故郷で再会。今度こそ「ペニーワイズ」を倒すべく、命がけの戦いに挑む。

 ショッキングな場面も多いホラーながら、かつての少年少女が大人になって故郷に集まり、久しぶりに力を合わせる物語そのものが感動的。冒険の後、それぞれは自分の生活に戻るが、もう子供のような日々に帰れないというさみしさも。その哀感には、同じキング原作の名作「スタンド・バイ・ミー」に通じる、深い味わいがある。

(C)2019A24FILMSLLC.Allrightsreserved.
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 【あえて観客を不愉快にさせる】「ミッドサマー」2019年・米国(ブルーレイ5390円(税込)発売元:TCエンタテインメント 販売元:TCエンタテインメント)
 
 タイトルは英語で「白夜」の意味。楽しいことが多そうな夏だが、白夜のように何日も太陽が出続けると、ひょっとしたらそれは悪夢に転じるかもしれないという、ユニークな視点のホラー。

 心的外傷を負った米国の大学生ダニー(ハリウッドで注目度上昇中の若手女優フローレンス・ピュー)は恋人に誘われ、スウェーデンのある村で90年に一度しか開かれない「夏至祭」を体験することに。ダニーと恋人、仲間たちがそこに向かうと、いずれも優しい村の人々から歓迎される。だが天国のような光景は、すぐに地獄モードへ。実は村にはカルトのような独自の風習があり、むごたらしい儀式が続く。

 初長編「ヘレディタリー/継承」が大反響を呼んだホラーの鬼才アリ・アスター監督ならではの、あえて観客を不愉快にさせるかのような唯一無二のセンスが光る衝撃作。夏というテーマも料理の仕方によってはこうなることにびっくりだ。

(C)1988WarnerBros.EntertainmentInc.Allrightsreserved.
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 【年上女性に恋焦がれ】「君がいた夏」1988年・米国(ブルーレイ2619円(税込)発売元:ワーナー・ブラザース 販売元:NBC ユニバーサル)

 少年が年上の美女に憧れた夏を甘酸っぱくつづった、泣けるラブストーリー。再起に成功した大リーガー、ビリー(マーク・ハーモン)は、6歳年上のいとこである女性ケイティ(ジョディ・フォスター)が自殺したことを知る。

 ビリーは少年時代、ケイティに励まされ続けたが、ケイティはビリーに自分の遺灰をある場所にまいてほしいと遺言を残していた。彼女の両親が娘の遺灰は墓地に埋めるべきだと主張する中、大胆にもビリーはケイティの思いを遂げようとする。

 美女フォスターが醸す「年上の美女」の魅力と存在感は圧倒的だ。また、クライマックスを大いに盛り上げる音楽を担当したのは人気作「セント・エルモス・ファイアー」の名手デビッド・フォスター。

(C)1981WarnerBros.EntertainmentInc.Allrightsreserved.
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 【ひと夏の恋は危険すぎた】「白いドレスの女」1981年・米国(ブルーレイ2619円(税込)発売元:ワーナー・ブラザース 販売元:NBC ユニバーサル)

 夏は恋が始まることが多い季節というが、暑さゆえか、平常心を失った男性が欲望に運命を狂わされてしまうこともある。そんな危険な夏を描いた犯罪サスペンス。舞台はマイアミ。蒸し暑い夏の夜、弁護士ネッド(ウィリアム・ハート)は、白いドレスを着たセクシー美女マティ(キャスリーン・夕ーナー)にたちまち心を奪われる。ネッドは彼女に夢中になるが、彼女には20歳も年上の裕福な夫がいた。何度も密会を繰り返すうち、ネッドはマティの夫の爆殺計画に加わり、それを実行に移す。だがすべては悪女のマティが仕掛けたわなだった。

 エリートのネッドは自分の地位と立場を守ることができるのか。寝苦しい真夏の夜にぴったりな1本。大人の女性の妖艶さがほとばしるマティ役の夕ーナーは本作が出世作となり、人気女優の座に駆け上がった。

☆ いけだ・さとし 1967年東京都生まれ。早稲田大学卒。海外ドラマ評論家、映画ライター。雑誌「スクリーン」(近代映画社)、「多聴多読マガジン」(コスモピア)、ウェブ連載「8時だよ!通販生活・週刊テレビドラマ」(カタログハウス)などに寄稿。WOWOWのアカデミー賞中継でアドバイザーを約20年担当。テレビ、ラジオにも出演。著書には「『今』こそ見るべき海外ドラマ」(星海社新書)などがある。