「参院選後に再び安倍さんの時代となり、あと10何年も権勢を振るうはずだった」と話すのは、「安倍晋三 安倍家三代」「安倍官邸『権力の正体』」などの著書がある作家の大下英治氏だ。安倍氏が永田町に再び君臨することで、“昼将軍”の異名を命名する矢先のテロで、永田町は大混乱に陥るとみる。

「安倍さんという人は『日本一善人』と言われたお父さんの安倍晋太郎さんと『日本一したたかな妖怪』と言われたおじいさんの岸信介の2つの血を持っている。優しいところがありながら、したたかで、両方を持っているから支える政治家や官僚がいた」とその血脈からなる強さを指摘する。

 2006年に戦後最年少となる52歳の若さで首相に就任するも持病の潰瘍性大腸炎に苦しみ、わずか1年で退陣。再起はないとみられたが、民主党政権の体たらくを受け、復権を果たし、12年からの第2次政権は20年9月まで続き、通算在任日数8年8か月は憲政史上最長を誇った。

「2回とも病気で倒れて政権を投げたが、薬が十二分に効いて、今では完全に良くなった。だから今回の参院選でも、ものすごいスケジュールで日本中を回っていた。元気になった安倍さんはまだ67歳。あと4~5年もすれば、二階(俊博)さんや麻生(太郎)さんら上の世代の力を持った人たちはいなくなる。党内の最大派閥(清和会=安倍派)を率い、その力は強く、よその派閥とも組んで、じわりじわりと浸透させていく。安倍さんの時代が十何年近く続くはずだった」

 3回目の首相返り咲きも可能となる環境は整うが、首相の座にはもう就く意思はなかったとみる。

「総理をまたやるよりは、自分が大きな力を持った方がいいという考えだった。首相退任後に力を持った田中角栄は罪人になっていたから闇将軍といわれたが、安倍さんは罪があったわけじゃないから“昼将軍”として堂々とできた。おじいさんは満州国をつくった“満州の妖怪”と言われたが、安倍さんは爽やかで一見、妖怪風でないのにしたたかな“令和の妖怪”として力を持つ可能性があった」

 実は本紙は今秋、大下氏の新連載企画として「“令和の妖怪”安倍晋三」をスタートさせる予定だった。

 しかし、予期せぬ凶弾に倒れた。「歴史的にも珍しい強い政権で、この先も安倍さんの時代が続くと思っていたところに事件が起きた。これまでの日本の中心的存在が亡くなり、政界はある面で大変な財産を失ったかもしれない。日本の政界の大変革ともいえる大事件になった」。安倍氏を中心に回るはずだった政局は一転、大混乱の時代に突入することになるのか――。