コンビニのカウンターフードを圧倒的に支配する“チキン帝国”だが、世の中の変化に対応することで進化を遂げてきたのがコンビニの歴史でもある。「チキンを超えるヒットを生み出せ!」という特命を受けた開発担当者に、本紙おなじみの流通ウォッチャーの渡辺広明氏(53)が迫った。
「コンビニに初めてフライヤーを導入したのはローソンで1979年のことです。私もローソン勤務時代には数えきれないほど『からあげクン』(86年発売)を揚げましたね。当時はフランクフルトやアメリカンドッグ、コロッケはなく、『からあげクン』一強でした」(渡辺氏)
その後、アメリカンドッグやフランクフルトも定番化するものの、ファミリーマートが2006年に発売した骨なし一枚肉の「ファミチキ」が大ヒットすると、ローソンも09年に「Lチキ」を投入。10年代に入るとセブン―イレブンも「揚げ鶏」や「ななチキ」で追随し、さらに一口サイズの唐揚げや焼き鳥までメニューが増え、レジ横スナックは“チキン帝国”が栄華を極めている。実際、コロナ禍の昨年3月~今年1月でさえ、「Uber Eats」で最も売れたローソンの商品は「からあげクンレッド」だった。
しかし今から1年前、ローソン商品本部商品コンセプト開発部シニアマーチャンダイザーの内田恵美氏に「チキンを超えるカウンターフードを開発せよ!」というミッションが下されていた。
既存のカウンターフードにとらわれない商品を開発するべく、内田氏は綿密な市場調査を敢行。そこからヒントをつかみ、新メニューは食感にこだわった。
「もちもちした食感とチーズを組み合わせたら、小腹がすいたときに女性にも食べてもらえると思いました。もちもち食感のスイーツはあっても、しょっぱいものはない。また、スナックやおせんべいみたいに音を立てずに食べられることもポイントだと思いました」(内田氏)
こうして誕生したのが、先月19日に発売された新食感おやつ「もちもちチーズまる」(税込み216円)だ。一口食べた感覚はまさに未知との遭遇。お餠を食べているような気分にもなるが、内田氏によると主な原料はチーズペーストとマッシュポテト、でんぷんを組み合わせていてお餠は使っていないという。発売からわずか4日で100万個を売り上げ好調なスタートを切った。
フライドフーズにイメージキャラクターが採用されたのも「からあげクン」と「Lチキ」以来だというから、「もちもちチーズまる」への期待度が高いことを裏付けている。
渡辺氏が「少し細かい話になりますが、『からあげクン』が(保温され続ける)ホットケースで販売されるのに対して『チーズまる』が常温ケースとすみ分けができているところも評価できる。うまくいけばダブルエースになる」と期待を寄せれば、くしくも「もちもちチーズまる」と名前がそっくりなローソン広報部の持丸(もちまる)憲氏も「4個じゃ物足りないのではと思っていたのですが、食べてみたら思ったよりも満足感が高い。ちょっとしたおやつやおつまみに最適ですね」と笑顔でアピールした。
まだまだ“チキン帝国”の牙城は高いが、「もちもちチーズまる」は現在発売中の明太マヨ味と燻製ベーコン味の2品を軸に、今後はスポット商品として3品目も投入される見通し。冒険はまだ始まったばかりだ。
「チキンを超えろ!」の流れはファミマでも起きていた!
ファミマが先月発売した「ファる巻 タコスミート」(税込み120円、期間限定)も話題を呼んでいる。既に「中華春巻」を販売していたにもかかわらず、「ファる巻」と命名されたのは、「総菜としてだけでなく、スナック感覚でお召し上がりいただきたかったのでファミマとひっかけました」(商品担当者)。
開発段階でライバルにされたのはやはり「ファミチキ」で、「ファミチキを超える商品を作ることを目指して、つくね串やファミコロなど隠れた人気商品の改良、ファる巻のような新商品開発も行っています」というから、打倒“チキン帝国”の機運は今後も加速しそうだ。
☆わたなべ・ひろあき 1967年生まれ。静岡県浜松市出身。「やらまいかマーケティング」代表取締役社長。大学卒業後、ローソンに22年間勤務。店長を経て、コンビニバイヤーとしてさまざまな商品カテゴリーを担当し、約730品の商品開発にも携わる。著書に「コンビニが日本から消えたなら」(KKベストセラーズ)。












