【今さら聞けない 意外と知らない!? ケンコー豆知識】競馬界で重きを置かれる血統。人間界においても親から受け継がれるもの、すなわち遺伝子の解析が注目されている。あのPCR検査も遺伝子検査の一種だが、近年は種々の検査サービスが登場しているのだ。遺伝子検査とはどんなもので、何ができるのだろうか。

 まずはやはり病気の予防だ。ある病気の原因遺伝子が明らかになっていれば、人間の遺伝子を解析することによってその病気の発症リスクを知ることができる。病気になる前に早期発見できれば予防や治療がしやすくなるだろう。実際、がん、生活習慣病、リウマチ、骨粗鬆症などに遺伝子検査は活用されている。最近では日本にも遺伝子検査を不妊の原因分析に活用する企業も登場するなど、医療での活用は今後さらに増えることだろう。

 遺伝子が伝える人間の形質には種々のものがある。病気に関してだけでなく、性格や運動能力なども遺伝する。慎重な性格は親から子へ遺伝することが多く、走る速さも親から子へ遺伝することが多い。そこで、慎重遺伝子や走力遺伝子を検査すれば、仕事やスポーツ、趣味などの適性判断の参考にもできる。

 また、髪の色、肥満、お酒に強いか弱いか、記憶力、やる気などなど、様々なことに影響を与える遺伝子があることもわかっている。先週も伝えた通り、そうした各種の遺伝子についての検査サービスが諸外国では日本よりはるかにたくさん登場しているのだ。趣味の参考にされるだけでなく、時には就職試験の適性判断や結婚情報サービスの相性診断に利用されたりする。

 ただし、注意すべきは、資質や能力のすべてを遺伝が決めるわけではないということ。肥満遺伝子を親から受け継いでも、必ず子供が太るわけではない。

「わかりやすく言えば、遺伝子が決定しているのは人間の脳の構造などのハードウエアなのです。ハードウエアの動かし方を調整したり洗練するために、遺伝以外のソフトウエアが必要です」

 こう説明してくれたのは医学博士で遺伝子学を専門とする中原英臣・西武学園医学技術専門学校東京校校長。そのソフトウエアを人間に身につけさせてくれるのが教育や環境などだとアドバイスしてくれた。なお、こうした経験によって得られた獲得形質は遺伝しない。

 遺伝の影響が大きいスポーツの分野でも、名選手の子供が名選手になるとは限らない。スポーツだけでなく、学問や芸術の世界でも、遺伝だけで親から子へと優秀さが伝わるわけではないことが証明されている。親が高等教育を受けたからといって、その教養を遺伝子として受け継いだ子供が生まれるわけではない。だから「遺伝によって資質を受け継いでいない人は努力してもムダ」などと、努力を放棄してはいけないわけだ。

 今後、悪用や差別への対応策が取られた上で遺伝情報の病気予防などへの活用はさらに進展していくことだろう。スポーツや芸術の分野でも、単に適性を判別するだけでなく、資質面での弱点を補強するための参考にするといった積極的な遺伝子検査の活用も威力を発揮するはずだ。来年も目が離せない。