絶対に負けられない戦いがナオミにはある。女子テニスで世界ランキング10位の大坂なおみ(22=日清食品)が全米オープン(31日開幕、ニューヨーク)に出陣する。断トツの優勝候補と目されているが、最大の敵は自らが背負い込んだ「宿命」だ。決勝を棄権したウエスタン&サザン・オープンでは、警察による黒人男性銃撃事件への抗議行為としてボイコット騒動を巻き起こし、すでに極度の重圧が襲っている。果たして、耐えられるのだろうか。
大坂は前哨戦のウエスタン&サザン・オープンを「エモーショナル(感情的)な1週間」と表現。元コーチのサーシャ・バイン氏(35)の前で勝利し、恋人のラッパー、コルダエ(23)の誕生日に逆転勝ち…とハッピーなニュースもあったが、最大の出来事はテニス界を揺るがした“大坂の乱”だろう。
準々決勝の勝利後、ウィスコンシン州で非武装の黒人男性が警官に銃撃された事件への抗議としてSNSで準決勝のボイコットを示唆。これを受けて主催者は大会を1日中断する異例の措置を取ると、納得した大坂は方針転換し準決勝に出場して快勝した。ここまでは良かったが…最後の最後で左太もも故障のため決勝戦を「棄権」という思わぬエンディングを迎えた。コート内外で話題を集め、良くも悪くも異様な注目を集める結果となった。そんな中で臨む全米オープンの勝算はあるのか。今回の会場は前哨戦と同じで出場メンバーもほぼ一緒。トップ10のうち6人が新型コロナウイルス禍を理由に回避しており、第4シードの大坂は優勝の大本命といっていい。
DAZNテニス中継の解説者・佐藤武文氏(49)は「ハードコートの種類がレイコールドに変更されましたが、明らかに球足が速く、パワーヒッター、ビッグサーバー向き。強力なサーブを持つ大坂選手には有利と分かった。今回もチャンスだと思います」と期待を寄せる。
その一方で懸念されるのが、一連の抗議行動の余波だろう。大坂は準決勝後に「前夜は本当にストレスを感じ、よく眠れなかった。ものすごく重圧を感じていた。自分の声明に説得力を持たせないといけないと思っていた」と話していた。実際、抗議行動は選手から称賛されたものの、決勝を棄権した後はネット上で批判も急増した。応援メッセージに交じって誹謗中傷も多かったようで、大坂はスマホの電源を切っていたことも明かしている。
米プロバスケットボールNBAや大リーグのチームも黒人男性銃撃事件への抗議で試合をボイコットしているが、佐藤氏は「テニスは個人競技なので、発信すればモロに自分に返ってくる。そのプレッシャーは団体競技の選手の比じゃないです。そこで負ければ、何を言われるか分からない。その重圧とどう闘うかでしょうね」と指摘する。貫いた信念と引き換えに得た代償は計り知れないということだ。
自身3度目の4大大会制覇へ向けて31日(同9月1日)の1回戦では世界78位の土居美咲(29=ミキハウス)と対戦。大坂自身は全米オープンへ懸念が残る中で「(ケガで)少しストレスは感じるが、できる限り自分のベストを尽くしたい」と前向きに話すが…。“大坂劇場”にはまたまた波乱の予感が漂っている。












