日韓W杯のヒーローが激闘の舞台裏を激白した。日本と韓国の共催で2002年5月31日に開幕したアジア初のW杯からちょうど20年。大熱狂の大会で日本代表を初の決勝トーナメントに導いたMF稲本潤一(42=南葛SC)がインタビューに応じた。後編では、日本代表を指揮したフィリップ・トルシエ監督が過激な言動を繰り返した理由を告白。さらに大躍進したチームの内情を明かした。

【稲本潤一インタビュー・後編】

 ――日韓W杯から20年。当時22歳だった

 稲本 代表選手として、言っていいのかわからないけど、プレッシャーも何もなかったし、ただ楽しかった。1999年(世界ユース選手権)、2000年(シドニー五輪)、02年と連続で世界大会があり、W杯もその延長の気持ちだったし、自国開催で重圧や緊張感もなかった。若かったんでのびのびやれたし、みんながサポートしてくれた。ダブルボランチ(守備的MF)を組んだ戸田(和幸)さんとか。感謝しかないです。

 ――トルシエ監督は厳しい指揮官だった

 稲本 僕はトルシエさんが指揮した3世代(U―20代表、五輪代表、A代表)の代表に呼んでもらっているので、恩がありますね。いろいろ(メディアでは)言われていますが、当時の日本にはそのくらいの厳しさが必要だったのかも。代表チームについては、言われたことを守るばかりではなく、話し合い、自分たちで判断してやろうという姿勢もありました。厳しさを逆手にとったわけではなく、話し合って行動していたので。

 ――トルシエ監督はいつも怒っていた

 稲本 まあ、本気で怒っている時もありましたけど、多くはパフォーマンスだったので。甘さとか、少し緩んでいるから引き締める狙いもあっただろうし、当時世界を知っている選手はヒデさん(中田英寿)しかいなかったので、トルシエさんが厳しく言うことは必要だった。公開練習は非公開よりも緊張感を選手に伝えるため、過度に言う時もあったかもしれないけど、それも監督の演出じゃないですか。

 ――選手につらく当たることもあった

 稲本 まあ、僕はあまり気にしていませんでしたし、ユース代表時代から一緒にやっているんで「また怒っているな」くらいにしか思っていませんでしたが、ターゲットにされたのは物静かそうな選手。成長のため期待を込めたコミュニケーションですけど(小笠原)満男がやられてましたよね。今の満男とは違う感じでしたけど、そのおかげで彼は(指導を受けて)成長できたのかもしれないです。僕はストレスにならなかったし、楽しかったくらい。

 ――チームの盛り上げ役は誰か

 稲本 ゴンさん(中山雅史)とか秋田(豊)さんがやってくれた。いつもみんなに声をかけてくれたし、気を使ってくれた。相談役? それもゴンさんでした。通訳のフローラン・ダバディー? 熱かったですよ。いつも自分の感情込みで監督の言葉を訳してくれた。監督がひと言、ふた言しか話していないのに、ものすごく長く話していることもあって「ちょっと違うやろ」って時もありました。

 ――合宿生活中に〝伝説〟となったバーべキュー大会があった

 稲元 大会前の決起集会でトルシエさんが開催してくれて、おもしろかったですね。みんなで監督をプールに落としましたしね。ヒデさんもプールに放り込んだ? 実はみんなで狙っていました。ヒデさんに対する世間のイメージと僕たちのイメージは違うので…そこまでヒデさんも抵抗はなかったですし(落とされるのを)待っていたんじゃないかって…思いますよ(笑い)。それで結束力が高まった? ゴンさんが盛り上げてくれましたし、チームの一体感につながるイベントでした。

 ――9月には43歳になる。55歳で現役の元日本代表FW三浦知良(JFL鈴鹿)を意識するか

 稲本 カズさんですよね。意識するのもおこがましいっていうか、次元が違いすぎる。別の生き物と思っている。正直目指すところではないですね。ただただ、すごいなと…。同じ55歳まで続ける? いやいや想像できないでしょ。

 ――かつて所属のアーセナルで日本代表DF冨安健洋が奮闘。先輩としてどう見ているか

 稲本 過去アーセナルに加入した日本人選手では、1番じゃないですか。すごく評価されていてリーグにもなじんでいるのはすごい。DFでチームに貢献できるのはすごいことですよ。厳しいリーグでレギュラーとなり、結果を出しているのは力がある証拠。できるならばセンターバックで見てみたい!

 ☆いなもと・じゅんいち 1979年9月18日生まれ。大阪府出身。97年に17歳6か月25日でJ1G大阪でトップデビュー(当時最年少)。2001年にアーセナル入りし、その後もガラタサライ、Eフランクフルトなど海外でプレーした。99年世界ユース選手権準優勝、00年シドニー五輪出場、02年日韓W杯から3大会連続出場。国際Aマッチ82試合5得点。今季から関東1部の南葛SCに所属。181センチ、77キロ。