熊本・八代市の秀岳館高サッカー部での暴行問題にオリンピアンの有名指導者が〝喝〟だ。陸上短距離の元五輪日本代表で現在は多くの有名アスリートを指導する杉本龍勇法政大教授(51)が本紙の取材に応じ、問題の渦中にある段原一詞監督や暴行に関与したコーチを糾弾。スポーツ界にはびこる暴力の根絶へ解決策を提言し、スポーツ庁の室伏広治長官による発信の必要性も説いた。

 秀岳館高サッカー部の問題は、まず男性コーチによる部員への暴行動画が流出。後に生徒が謝罪する動画が投稿されて波紋を広げ、その指示を巡って段原監督が日本テレビ系の情報番組「スッキリ」で〝ウソ釈明〟を行ったことが発覚して大きな批判を浴びている。学校側の会見ではサッカー部内で暴行が常態化している事実も明らかになり、騒動は拡大し続けている。

 杉本氏は生徒に手を下したコーチ、そして〝恐怖政治〟を敷いた段原監督の責任を追及。「彼らが行った行為はモラルに反する。言葉で説得させるだけのコミュニケーション能力がない、話術がない、語彙がない、ボキャブラリーが足りない、相手の感情が読めない。結果、感情的になって手を出したのだろう。もう指導者として能力がないとしか言いようがない」と厳しく批判した。

 この期に及んでも段原監督は会見で続投に意欲を見せたが、杉本氏は言語道断と憤る。「辞めて責任を取ることも有効な手段ではあるが、そういう人は辞めて別の場所に行っても同じことを繰り返す。サッカー部の監督を辞めるというより、スポーツに一切関わらないようにしてもらうしかない。子供のスポーツなど自分たちでクラブを立ち上げることもできてしまう。そういうことも禁止、やめてもらわないといけない」と辞任だけではなく、スポーツ界からの〝追放〟を求めた。

 今回の問題は秀岳館高にとどまらず「現実としては、いまだにどこでも体罰は起きている」とスポーツ界全体の問題と警鐘を鳴らす。暴力を根絶するための解決策として「育成年代の指導者のレベルが低いことが、今回の体罰の問題も含めて露呈している。指導者の能力を上げていくことを地道にやっていくしかない」。

 自身も静岡県スポーツ協会でコーディネーターとして指導者講習会を実施しており、指導法に加えて人間教育の場となるよう注力している。「指導者は選手と一緒で、能力がある人とない人がはっきり分かれる。我々はそこを勘違いしないことがすごく大事。自分の自己実現ではなく、他人の人生を背負っていく仕事。他人の人生を変えるということを理解していない指導者が多すぎる」と指導者としての心構えの重要性を訴える。

 スポーツ庁の対応にも注文を付ける。「スポーツ庁が今回の体罰をどう捉えているのかが見えない。(室伏)広治(長官)は旧知の仲だけど(プロ野球の)日ハムのキャンプに行ってる場合じゃないよと(笑い)。体罰の問題も含めてスポーツ庁も言及していかないと。室伏広治は我々の世代も、その下の世代にとってもアイコン(象徴的存在)だから。彼が『体罰なんてやってもしょうがないだろ』と一言でもコメントすればやっぱり大きい」。スポーツ界をけん引する〝後輩〟の働きに期待を寄せた。

 秀岳館問題をきっかけにスポーツ界の暴力根絶が進むか。

☆すぎもと・たつお 1970年11月25日生まれ。静岡県出身。法大経済学部教授。浜松北高、法政大などで陸上短距離選手として活躍。1992年バルセロナ五輪に100メートル、400メートルリレーの日本代表として出場。リレーでは6位入賞を果たした。引退後は指導者に転身。浜松大、ラグビーのサントリー、Jリーグの清水、湘南、大分などのほか、近年は吉田麻也や堂安律などへの指導でも知られる。