ゲームなどファンタジーを題材にした現代の創作物にも出てくる幻獣「カトブレパス」。敵のモンスターとして描かれることが多いが、その理由は「邪視」の能力にある。その1つ目でにらまれると石化、もしくは死に至らしめる能力があるのだという。

 そもそも、この邪視という能力は世界中に広く分布する民間伝承の力である。にらみつけるなど、目に力を込めて見ることで呪いをかけるのだ。目力、眼力という言葉もあるが、恨みやねたみで他人を見る時の表情は確かに力強いものだ。

 他にもカラスよけではないが、目の模様が入った魔よけの護符などもあるし、フリーメーソンでも有名な「プロビデンスの目」のようなデザインでも、人を引きつける力があることが分かる。

 いかに人間が目という感覚器官、目の表現力に重要性を見いだしていたのか、といったところか。とにかくカトブレパスは恐れられている存在として描かれるのだ。

 このカトブレパス、古代ローマにおいては創作というよりも未確認生物として捉えられていた側面がある。古代ローマの博物学者、大プリニウスことガイウス・プリニウス・セクンドゥスが、自然界について著した「博物誌」に記述がある。

 全37巻あるこの書物は、あらゆる自然について、天文学、地理学、生物学、鉱物などを網羅した百科全書ではあるが、現代でいうところの怪物のようなものも記載されている。その中のひとつとしてカトブレパスも書かれていたのではないだろうか。

 カトブレパスの生息地は西エチオピア。牛のような四足動物で、頭が重いために首を下げたような姿勢だという。カトブレパスという言葉はギリシャ語で「うつむく者」を意味するのだ。動きは緩慢。目を見ると死んでしまうという記述の他に、吐く息が毒だという伝承もある。

 その後もヨーロッパ圏では書物に記述があるために、広く知られたモンスターになったのである。そのためか18世紀から19世紀に活躍したフランスの博物学者であるジョルジュ・キュヴィエによって、アフリカ大陸の南部に生息するヌーという牛の一種の見間違えではないかと指摘された。

 ヌーは確かに色が黒く邪悪に見え、手足が細く、体毛が少ない割には、たてがみや尾には黒い毛が長く生えている。また、頭部には曲がった一対のツノがあり、全体的に不吉なイメージを持っても仕方のない容姿をしている。ツノやたてがみの関係で頭が大きく見えるのも特徴だ。

 未確認生物が生まれる背景には、何かしらの理由がある。火のないところに煙は立たず、その原因を知るのも我々の役目なのかもしれない。