ついに花が咲いた! 北京五輪スノーボード女子ハーフパイプ決勝(10日、雲頂スノーパーク)、冨田せな(22=アルビレックス新潟)が88・25点で銅メダルを獲得した。初採用の1998年長野五輪以降、日本女子として初の快挙。海外のライバルたちを押さえて表彰台に立った裏には本人の努力はもちろんのこと、元世界王者による〝脱鬼指導〟があった。

 達成感のあまり、涙がこぼれそうになっていた。1回目にフロントサイド1080(横3回転)を決めて86点を出した冨田は、2回目で精度を上げてさらに点数を伸ばした。試合後は「ビックリしてます。1本目を決められたのがすごいでかくて。2、3本目攻められたので、こうやって結果が付いてきてうれしい」と喜びをかみしめた。

 ハーフパイプといえば、2大会連続銀メダルの平野歩夢(TOKIOインカラミ)を筆頭に男子が強いイメージもある中、冨田も世界で通用する実力を着実に磨いてきた。前回の平昌五輪は8位入賞、先月行われた招待大会の冬季Xゲームでは初優勝を果たしている。その女子のレベルアップを支えていたのが、2009年世界選手権で金メダルに輝いた日本代表の青野令コーチ(31)だ。

 2019―20年シーズンに就任した青野コーチによると、日本の選手の長所は海外選手と比較して男女ともに練習量が多い点だという。昨秋、欧州合宿を行っていた際は「練習時間が午前9時半から1時半までと決まっている中、他の(国の)選手は12時ごろ帰って、日本選手だけ1時過ぎまで滑っていましたね」と振り返る。

 その一方で、かねて課題に挙げていたのが男女の価値観の違い。青野コーチは「男子は自分たちでいろんな人の滑りを見て、いいところを吸収できるんです。でも、女子選手は自分や他の選手のビデオを見て、いいところを吸収するよりも、見比べる傾向にあるんですよ。自分で自分を追い詰めちゃうみたいな」と指摘した。

 こうした女子選手の意識改革を促すべく、青野コーチが実践してきたのが〝プチ宿題〟を与えることだった。「毎日僕が個々に目標を与え、それに向かってやってもらう」。それぞれの選手にいい点、悪い点を細かく把握してもらうことで、次のステップが明確になる。それによって過剰な比較や自己否定からの脱却に努めてきたというのだ。

 青野コーチ自身、当初はアーティスティックスイミング(AS)の日本代表でヘッドコーチを務め、スパルタ熱血指導で知られる名指導者の井村雅代氏が〝理想像〟だったというが「あそこまでなかなか厳しくできない」と〝鬼指導〟を断念。そこから自らのスタイルを確立し、3年かけてようやく花を咲かせ「(選手には)自分の子供のような気持ちで『愛』を注いできましたよ」と笑った。

 青野コーチの冨田評は「一番いいところは謙虚。常に自分が一番じゃないと思って練習しているので、一番になるために練習するタイプ」。〝愛弟子〟の一人が大仕事をやってのけた。