テニス女子で世界ランキング36位の大坂なおみ(24)は、苦手のクレー(赤土)シーズン初戦マドリード・オープン1回戦(29日=日本時間30日)で世界78位のアナスタシア・ポタポワ(21=ロシア)に6―3、6―1で圧勝した。昨年はクレーシーズンの大一番・全仏オープンに向けて記者会見拒否を表明。世界中で物議を醸したが、今回は心身ともにパワーアップ。大騒動に発展した昨年の“因縁”を振り払う――。

 大坂にとって苦手のクレーコート初戦。前週にツアー初優勝を果たし、9連勝中と勢いに乗るポタポワを相手に第1セットから時速200キロを超える豪快なサーブを披露し、主導権を握って先取すると、第2セットも危なげない試合運びで優位に試合を進め、最後は4ゲーム連取で期待の新星を圧倒。約1時間で試合を制した。

 大坂は苦手のクレー攻略のため、通常のツアーよりも1週間早くスペイン入りし、調整をスタート。クレーのスペシャリスト、男子の世界4位ラファエル・ナダル(35=スペイン)のプレーを研究するなど、徹底対策を進めてきたように、大坂にとって全仏オープン(5月22日開幕、パリ)をフィナーレとする今季クレーシーズンには特別な思いがあった。

 昨年、苦手クレー対策について毎試合後の取材で聞かれることにうんざりした大坂は全仏オープンを前に記者会見を拒否すると表明した。これに批判が殺到すると大騒動に発展し、大会を途中棄権。さらにうつ病を告白し、大きな波紋を広げた。その後メンタルヘルスケアに取り組んだものの、成績は伸び悩み、6月のウィンブルドン選手権を欠場。7月の東京五輪3回戦敗退、8月の全米オープン3回戦敗退後に長期休養に入った。

 2022年に入って競技復帰。徐々にプレー勘を取り戻すと、3月のマイアミ・オープンで準優勝と復活への足掛かりをつかんだ。そして迎えた今季クレーシーズンで好成績を収め、昨年の大騒動を払拭し“トラウマ”を抱えた過去の自分を乗り越える構えだ。

 元世界ランク1位の大坂は「簡単な試合とは言いませんが、少し適応できた気がする」と振り返り「クレーコートに戻れることを当然とは思っていなかった。私は正直に、自分自身に前向きになろうとしている」。メンタル面も強くなった大坂が再び世界女王の座を目指す。