大相撲名古屋場所(7月10日初日、愛知県体育館)で横綱照ノ富士(30=伊勢ヶ浜)が〝脱フルスロットル調整〟で連覇を目指す。角界ではコロナ禍で自粛されていた出稽古が期間限定で解禁された。多くの力士が出稽古に励む中、照ノ富士はあえて〝部屋ごもり〟で調整。それでも部屋関係者は横綱の仕上がりに自信を見せている。

 照ノ富士は名古屋場所の新番付が発表された27日、オンラインで会見を行った。休場明けで迎えた5月の夏場所は12勝3敗で3場所ぶり7度目の優勝。連覇へ向けて「名古屋での優勝がない。今までどんな時でも支えてくれた名古屋の後援者の方々やファンもいますから、今年こそという気持ち」と意気込んだ。

 そうした中、日本相撲協会は2020年の春場所前を最後にコロナ禍で自粛してきた出稽古を解禁。今月6日から22日までの間、力士同士が部屋の垣根を越えて切磋琢磨した。照ノ富士は「いいことじゃないですか。(協会が)稽古できる環境を作ってくれて、若い子たちはいろんな人と相撲を取ってみて体で感じることも多い」と前向きに受け止める一方で、自身は部屋にとどまって調整。かつては出稽古の〝常連〟だった横綱が、他の部屋へ出向くことはなかった。

 かねて両ヒザに不安を抱える照ノ富士は「昔、(最初に)大関に上がるころは番数を結構やっていましたけど(序二段に)落ちてからは回数ができる体ではないので」と出稽古を見送った理由を説明。先場所前には筋トレなどのオーバーワークで一時調子を崩した反省点も生かし、慎重に調整を進めている。

 それでも、昨年九州場所以来となる連覇へ向けて、不安はないようだ。部屋関係者は「(これまでと)稽古量は変わらない。同じ量やっているんだけど、例えばもうちょっと力を入れるところを抑えたり、自分の中で考えながらやっている。(先場所前と)同じ轍は踏まないでしょう。それに今場所は強いと思う。3日目まで問題なければ一気に(先頭を)走ると思う」と太鼓判を押している。

 約2年3か月ぶりの出稽古解禁にも流されることなく、自らのペースで調整を貫く道を選択。これまで通り泰然自若の姿勢で綱の責任を果たすつもりだ。