北京五輪の開幕まで、あと8日。スケート競技はフィギュアスケートやスピードスケートに注目が集まりがちだが「氷上の格闘技」と呼ばれるショートトラックも忘れてはならない。1992年アルベールビル五輪男子5000メートルリレーで銅メダルを獲得した川崎努氏(52)に、同競技ならではの魅力を解説してもらった。

 ――ショートトラックの魅力は

 川崎氏(以下、川崎)単純にスピードを競うのではなくて、ライバルを相手に勝ち進んでいくところがショートトラックならではですね。予選、準決勝、決勝といったような形で、要は相手に勝てばいいわけです。全てのレースを全力で滑ってしまうと体力が持たなくなるので、そういった駆け引きも特徴ですね。

 ――激しい競り合いが醍醐味だ

 川崎 何といってもスピードがある中を、小さなリンクで滑るので、とてもスリリングですよね。コーナリングは4人から6人、多い時には8人で滑るので、ここでの抜き合いは見どころです。

 ――よく選手たちが転倒するシーンを見かける

 川崎 若干、運みたいなところもありますが、選手は「このスピードでここを曲がり切って、この選手を抜き去る」という自信を持って滑っている。そこでバッチリと自分の思った通りに前の選手を抜き去ったときの快感というのは、選手誰しもが持っていてやめられない。非常に楽しみな部分だと思います。

 ――何が起きるか分からない面白さがある

 川崎 接近して選手たちが滑っているので、そこでいきなり前の選手の転倒を避けるというのはなかなか難しいですよね。でも全てをひっくるめてショートトラックなので、そういう転倒のリスク、抜けるか抜けないかというリスク、全部を自分が背負ってリスクを回避しながら誰が一番にゴールを切れるかという競技ですね。

 ――リレーは同じ選手が何回も滑る

 川崎 陸上のリレーとかだと1回タッチ(バトンパス)して終わりという形が多いですが、ショートトラックは何回でもタッチできるのが特徴ですね。例えば5000メートルリレーだったら、あの距離を1人10回ぐらいタッチしながら、滑っては休んで、滑っては休んでというのを繰り返します。

 ――何度も出番がある難しさは

 川崎 それだけタッチの回数が増えるので、タイミングのちょっとしたズレが積み重なっちゃうんですよね。でもそこを上手にやっていけば、自分の体力を温存できたり、一瞬のスピードを上げていくことで、相手との差をつくることができる。リレーのタッチのところの難しさをどう上手にいかしていくかが、カギになります。