【志賀貢 男の羅針盤】

【「金冷法」という古くて新しい強精術】

 寿命が長くなるにつれて、「いつまでも若々しい体を維持したい」という願望も強くなってくるのは当然のことです。

 そんな多くの男性の希望を叶えるために古くから伝えられているのが「金冷法」です。この強精術は簡単明瞭で、お風呂に入る時に、シャワーの冷水を両方の睾丸めがけて、ぶっかけるだけの方法です。その発想の原点は、おそらく昔の人も、体のどこよりも陰嚢の温度が低いと気づいていたからと思われます。

【睾丸は低温を好む。陰嚢の温度は3度低い】

 昔の人の発想は、医学的に正しいもので、確かに睾丸を包んでいる陰嚢の温度は、他の体の部分より低いのです。

 睾丸は、体温が高くなると、その働きが低下して不妊症になる恐れがあります。それだけではありません。睾丸は、胎児の時に腹部から陰嚢に移動します(睾丸下降現象)。もし、この移動が上手くゆかないと、睾丸はお腹の中で温められ、停留睾丸といって病的な変化を起こし、がん化することもあります。実際に手の施しようのない腫瘍に変化してしまった患者さんを診た経験もあります。

 そうした睾丸の特性を考えてみても、金冷法は、理に適った強精術だと思います。

【名刀は使わないと錆びる、冷水で磨こう】

 睾丸は3日に1回のペースで新しい精子を産み出す性本能の中枢的役割を担っています。

 この臓器の働きの低下は、性欲に重大な影響を及ぼします。本当は、名刀は錆付かせないためにも、定期的に使うのが理想ですが、この多忙な現代社会では、その手入れは大変だと思います。そこで、時間もお金もかからない、また肉体疲労も伴わない金冷法で睾丸の寿命を保つように心がけてください。

 ただし、血圧の高い人、心臓の悪い人は差し控えてください。また、あまりにも熱を込めて、睾丸を冷やしすぎないように注意しましょう。

 ☆しが・みつぐ 北海道生まれ。医学博士。昭和大学医学部大学院博士課程を卒業。臨床医として診療を行うこと50年超、現在も現役医師として日々患者さんに接している。文筆活動においてもベストセラー多数。性科学の第一人者にして、近年は高齢者の臨終や性に関しても健筆をふるう。美空ひばり「美幌峠」「恋港」などの作詞も手掛けた。