地震予知 本当に不可能なのか

2018年03月06日 07時10分

宏観現象の一つとされる地震雲だが、因果関係は解明されていない

 11日に東日本大震災の発生から7年を迎える。この間も、地震大国日本では熊本地震をはじめ、多くの地震に見舞われてきた。科学技術が目覚ましく進歩する中でも地震予知は不可能といわれるが、中国は先月、地震予知を目的とした衛星を打ち上げた。地震予知は本当にできないのか?

 気象庁は2007年から地震発生直前の初期微動をとらえ、揺れを警告する「緊急地震速報」を運用している。これは予報であって、予知と位置づけてはいない。また南海トラフ地震や首都直下地震も「30年以内に70%(南海トラフは70~80%)の発生確率」と発表されているが、これまた予測であって、予知でない。

「いつ、どこで、どのくらい」の3要素が事前にハッキリと分からない限りは、地震学としては、“予知”とされないからだ。

 予知を巡っては、異常な形をした雲の発生や動物の異常行動などが地震の予兆を告げる“宏観現象”といわれ、研究されてきた。ナマズが暴れたり、犬、ネコが鳴くなどが有名で、東日本大震災前には茨城の鹿嶋沖でイルカが大量に打ち上げられたり、地震雲も多数観測されていた。

 動物の前兆的行動を研究している麻布大学の山内寛之氏らの研究チームは、地震の発生前にストレスから乳牛の乳量が減少するとの研究データを発表。何らかの因果関係は認められるものの地震発生の場所や時期の特定にはさらなる研究、検証が必要とされる。

 そんな中、唯一、前兆現象から地震予知に実用化手前なのが、上空60キロ以上にある電離層の異常をとらえる観測法だ。地震前の地中ではプレートが動くことでひずみが生じ、その際、電気や磁気、電磁波の異常が起きるとみられる。この異常を日本全国に張り巡らせたアンテナでキャッチする。動物が示す異常行動の一部も電磁波や磁気の影響を受けていると言われている。

 東日本大震災など、これまでも大地震の発生前に電離層で異常が観測された。この手法では地震発生の約1週間前と短期予測が可能で、発生エリアもおおよそながら特定されるとあって、限りなく“予知”に近い。日本地震予知学会会長を務める電気通信大学の早川正士名誉教授は電離層研究の第一人者で、自身の研究所でも独自に予知情報の発信を行っている。

 この予知法に本腰を入れ始めたのが、中国だ。先月2日、中国は電磁環境モニター試験衛星「張衡1号」の打ち上げに成功した。電離層内の磁場やプラズマなどの観測が目的となる。

 前出の早川氏は「おそらく観測としては、うまくいくでしょう。中国はものすごいお金をつぎこんでいて、研究も地震予知も世界一の座を虎視眈々と狙っている」と指摘する。

“宏観現象”の言葉が中国語由来のように、中国はもともと地震予知に力を入れてきた。1975年に遼寧省で起きたマグニチュード(M)7・3を記録した海城地震の前には、動物や電磁波などの異常現象が相次いだことから政府が地震発生を警告し、住民が避難して最小限の被害で済んだ成功例がある。今回、専門衛星の打ち上げは並々ならぬ力の入れようだ。

 一方、日本は電離層の観測こそが予知につながると複数の研究者が訴えているが、いまだ国家的プロジェクトには至っていない。各研究者や民間の防災業者が懸命に予知技術の確立を進めている。

 中国が打ち上げた衛星がキャッチする電離層のデータが日本にも提供されればいいが、その可能性は限りなく低い。“地震大国”の日本こそが、被害を最小限に食い止めるためにも惜しみない予算の投入が望まれるのだが…。