和歌山県議会は20日、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)誘致について、国へ申請する区域整備計画承認の議案を反対多数で否決した。県の案は人工島(和歌山マリーナシティ)にIRを誘致。2027年に開業し、年間来訪者数約650万人、経済波及効果約3500億円と見込んでいた。国への申請には議会の承認が必要で期限は28日だったが、否決により事実上頓挫した。

 一方、長崎県議会は佐世保市のハウステンボスを予定地とした計画案を可決。すでに計画案を可決している大阪府・市と長崎の2地域が国へ申請を行う見込みだ。

 和歌山といえば自民党の二階俊博前幹事長、世耕弘成参院幹事長らのおひざ元。IRを推進する自民党の大物議員の地元議会が否決したことに、永田町関係者からは「まさか二階さんの地元で否決されるとは」と驚きの声が上がった。

 IR事情通は議会の判断について「中心事業者のカナダのクレアベスト・グループの資金計画が不透明で、議会では与党の自民党議員も疑問を呈していた。そこに、コロナ禍でインバウンドもなくなり、収益や来場者の見込みも怪しくなった。外国人向けだったのが、日本人からぼったくらないと収益が成り立たない方向に計画が変化したので疑問視したのです」と明かす。

 コロナでそろばん勘定が狂ったのは和歌山に限った話ではないが、お隣の大阪府・市は橋下徹氏が首長だった頃からカジノを強力に推進。現在の松井一郎市長、吉村洋文知事も前のめりだ。市政に詳しい関係者はこう話す。

「『カジノに公金を使わない』と宣言していた松井氏は、手のひら返しで土壌対策費として790億円をつぎ込むことを決めた。本来は和歌山のように議会が問題にすべきだが、維新ばかりで形骸化し、公明党も賛成した。外国資本だけが潤うものにこれほど執着するのは、自分たちの儲けのためか、誰かに何かを握られているのか…」

 IR整備法は、誘致する都道府県や政令市議会の承認を義務付けている。国交省の有識者委員会は施設構成、雇用創出を含む経済効果、財務面の安定性、依存症対策などを審査。認定されれば、2020年代後半の開業が見込まれている。