「破壊王」の愛称で親しまれた不世出の名レスラー・橋本真也さん(享年40)が2005年7月11日に急死して17年がたつ。本紙で「獣神激論」を連載中の獣神サンダー・ライガーは、1994年2月日本武道館大会で伝説の〝バトルライガー〟として名勝負を繰り広げたほか、リング外でも親交が深かった。橋本さんとともに闘魂三銃士と呼ばれた武藤敬司(ノア)も来春の引退を表明した中で、破壊王の命日にライガーの胸に去来する思いとは――。

【世界のレジェンド ライガーが語る獣神激論(21)】橋本選手といえばやっぱりIWGPヘビー級王者で、団体を支えている人間というイメージが一番強いよね。ベルトとハチマキを巻いてコーナーに立ってるイメージ。新日本の強さの象徴だった。その人間とシングルで試合ができたことは、僕は誇りに思ってますし、真正面から来て僕を潰してくれた…やっぱり橋本真也だよね。

 あの姿がバトルライガーと言われたけど、僕の奥の奥の奥の手だから。いらないものを省いて、身軽になって、真正面からぶつかっていかなきゃダメでしょって。姑息(こそく)なことはしたくなかったしね。

 プライベート? あ、プライベートは最低(キッパリ)。道場にあったスーパー・ストロング・マシンのプロテクターみたいなのを着けて多摩川の土手に行って、暴走族を警備するって…やめろ、危ねえんだから(笑い)。デタラメなんだから、本当。

 高枝切りバサミ買ってきては、刃の部分にゴムを当てて一生懸命作ってんだよ。「ゴム当てたら枝切れないやん」って言ったら、「枝を切るんじゃなくてマムシを取りに行くんだ」って。それでマムシ酒を造るって…賢いんだか、バカなんだか分からないよ。そういうかわいらしい一面があるから人が集まるんだよ。普通そんなバカなことばっかりやってたら離れていくはずなのに、離れていかない。みんなが「次の橋本、なにやるんだろう」って。ある意味で(アントニオ)猪木さんみたいなところもあるんだよね。得な性格だよ~。

 亡くなってもう17年。早いなあ…。今頃、天国で「ムトちゃん(武藤敬司)、お疲れ~。でも本当に引退するの?」って笑ってると思うよ。もし橋本が生きていたとしたら…どうだろう、55歳くらいで辞めてるかもしれないね。ゼロワンという団体のトップで、マッチメークみたいなことをやっているのか。サプライズが自然にできる男だから、いろんなアイデアを出していたと思う。

 それか現役を続けて(息子の)大地とタッグ組んでるか。で、リング上でひっぱたいてるかもしれない、昔の猪木さんみたいに。ふがいない試合してたら竹刀を持って入ってきてぶん殴るってあったじゃない。しかし大地は似てきたね~顔つきが。体つきは、あんまり似なくていいのに、体つきまで似てきたからな(笑い)。でも、ふとした瞬間見せるのは橋本選手の表情だよね。「あれ、ブッチャーそっくりやん」って思っちゃう。

 たらればを言うとキリがないけど、橋本選手が生きていたら、また違うプロレス、強いプロレスが息づいていたんじゃないかな。僕も引退したし、武藤選手も来春引退と言っている。みんな少しずつリングから足を洗ってるけど…そっちの世界に行った時は、また昔話でもしようや。それまでもうちょっと待っててくれって伝えたいですね。