【鉄旅タレント木村裕子の日本全国おもしろ鉄道】ゆるキャラ“ことちゃん”生んだ黒歴史

2019年06月11日 17時00分

大人の事情から生まれたゆるキャラ、イルカのことちゃん(左)。金毘羅山でことみちゃんと結婚式を挙げ、子供も生まれました

 近年の“ゆるキャラブーム”って、すごいですよね。一般投票で順位を決める「ゆるキャラグランプリ」で2011年に初代チャンピオンになった“くまモン”は、その後の2年間で1244億円の経済効果を生みました。

 ゆるキャラの数は15年をピークに減少していますが、今でも乗り鉄で地方に行くと、いろんなキャラクターがPRに励んでいます。もちろん鉄道会社にも、ゆるキャラはいます。クリーンなイメージのものが多い中、闇から生まれたのに超人気者になったキャラがいるんですよ!

 それは香川県を走る高松琴平電気鉄道(通称ことでん)の“ことちゃん”です。日本初のイルカ駅員として02年に誕生しました。なぜ、ことでんのゆるキャラがイルカなのか? その理由は意外な“黒歴史”なんです!

 赤字続きだったことでんは、かつて民事再生法を申請したんですが、当時の乗務員さんや駅員さんの態度はお世辞にもいいとは言えず、ことでんは「要るか?」「要らないか?」を議題に話し合いが行われました。この時の教訓を忘れないために、イルカ(要るか?)を採用することになったんです。

 本来ならこんな話題は隠したいはずですが、ことでんは潔く表に出しました。ことちゃんの公式紹介ページにも「大人の事情により誕生」と記してあります(笑い)。そんな潔さが功を奏し、瞬く間に人気が出たんです。

 人気者になったことちゃんは、続いて「実は、結婚を前提とした恋人がいます」と発表。沿線の金毘羅山でたくさんの方に見守られ、恋人のことみちゃんと結婚式を挙げました。その後、子供も生まれています(ハート)

 現在のことでんは、ことちゃんを前面に押し出しているんです。駅のポスター、電車のラッピング、ホームのごみ箱、自動販売機などに描かれているほか、車内でもつり革や網棚に人形がくっついているなど、完全なことちゃんワールド。鉄道界のアイドル的存在になっています。

 ここで木村ポイント! ことでんは他の鉄道会社とは違い、攻めたPRやグッズ販売でも話題を呼んでいます。5月に発売された記念ICカードの「新元号記念IruCa」のイラストには、新元号発表会見で「令和」と書かれた額縁と手話のワイプがかぶってしまった場面を再現したデザインになっています。

 発売と同時に完売してしまったため、並んだのに買えなかった方に記念ステッカーを全員に無料配布したところ、その神対応に称賛の声がたくさん上がりました。それでは、もう誰も「要るか?」なんて言わない、必要不可欠なことでんへ、出発進行!

(毎週火曜掲載)

☆きむら・ゆうこ=1982年8月17日生まれ。愛知県出身。鉄道をこよなく愛する鉄旅タレント。2015年にはJR、私鉄、地下鉄、ケーブルカー、モノレールなど、日本全国にある鉄道を全線乗車する「日本国内鉄道全線完乗」を達成。乗車した走行距離は約2万8000キロメートル。