今回紹介するUMAは変わり種。長きにわたって目撃されており、時には捕獲され、食べられたという報告すらある、非常に生息の可能性が高いものを紹介する。

 その名は「タキタロウ」。山形県鶴岡市(旧朝日村)の大鳥池に生息するとされる幻の巨大魚だ。大きさは2〜4メートル、体色は茶褐色で斑点模様があり、体表面はぬめりがある。尾びれが異常に大きく下あごがめくれ上がっている。性格は貪欲で警戒心が強く、摂氏4度の水温を好み、日ごろは湖底にいると考えられている。

 人気漫画「釣りキチ三平」で「O池の滝太郎」として紹介され、アニメのエピソードにもなったことから全国的に名が知られるようになったが、地元では昔から生息が伝えられてきた巨大怪魚だった。

 名前の由来は発見者が瀧太郎だったという説と、大鳥池の主とされる龍神のタキタロウからとったとする説がある。また、昔は「タケタロウ」という別名で呼ばれていたともいう。

 初めてタキタロウの名前が文献に登場するのは1885年に発行された松森胤保「両羽博物図譜」の「岩名」の項目であり、「大物ヲ瀧太郎ト云五尺計ノモノ大鳥川ヨリ流レ来ルコト有ト聞ク」と記述されており、昔から名が知られていたことが分かる。大きな体は非常に脂が乗っていると言われており、昔は縁起物として食べられていたという話も残っている。

 非常に希少ながら度々大鳥池周辺で捕獲されていたようで、20世紀に入ってもタキタロウらしき魚の捕獲例が報告された。1917年には水門工事のためダイナマイトを使用した発破作業を池で行ったところ、巨大な魚が2匹浮かび上がってきた。複数の作業員が持ち帰ったそうだが、食べるのに4日もかかったとされている。

 また、1985年には刺し網に150センチほどの大型の魚がかかり、全国的なニュースになった。専門家に鑑定を依頼したところ、「アメマス系のニッコウイワナ」と「オショロコマに近いアメマス」という2種の回答が出てきたが、結局正体の判明には至らなかった。
 なお、アメマスとニッコウイワナは生物学的には同種(亜種)とされているので、おそらく限定された環境下で独自に進化したイワナの亜種がタキタロウの正体ではないかと考えられている。

 さらに大鳥池の近くにはタキタロウの剥製や魚拓、標本が展示されている「タキタロウ館」なる資料館も存在。今も多くの人々に存在を信じられており、実際に釣り上げることを願う釣り人達も多く存在している。

 2010年に、さかなクンが発見したクニマスの事例もあることだし、ひょっとしたら今後、本当に新種として見つかるのかもしれない。