前回のUMA図鑑では、昔から知られる海の巨大UMA「クラーケン」を紹介した。

 このクラーケンは伝説も非常に有名であるし、現代では映画やゲームなど創作の世界にも登場するため、なじみ深いUMAであると言えるだろう。

 しかし、伝説にあるような「島と見まがうほどの巨体」を誇るというものは、さすがに非現実的な規模であると言わざるを得ないだろう。

 今回紹介するUMAはクラーケンよりはもう少し現実的で、しかし破格の大きさを持ったタコ型UMA「ルスカ」だ。

 ルスカは別名「オクトパス・ギガンテウス」と呼ばれることもある巨大なタコの姿をしたUMAだ。

 このルスカこそがクラーケンの正体であるとも、聖書にも登場する巨大魚「リバイアサン」のモデルになったとする説も存在する。

 ルスカはカリブ海のバハマ諸島近海に生息すると言われている。その姿は巨大なタコそのものながら、大きさは20〜30メートル。一説には60メートルとも言われており、島サイズのクラーケンには及ばないものの相当な大きさがあると考えられている。

 ルスカはもともとバハマの民間伝承に残る海の怪物であり、そこでは「体の半分がタコで、半分がサメ」という特異な姿をしているとされている。タコとサメではだいぶ体の構造が違うように思えるが、もしかするとタコの口がある辺り、傘の下の部分からサメの下半身が生えているような姿なのだろうか。または、タコの坊主頭に見える部分がサメの顔になっているというものなのだろうか。どちらにせよ、なかなか想像力をかき立てられる外見である。

 ちなみに、日本でも明治時代に上半身が人間のように見える「タコ人間」なる妖怪が関東近海で捕獲されている。このタコ人間はルスカのように巨大なものではなかったようだが、明治時代の新聞にも掲載された妖怪として注目されているものだ。

 ルスカはカリブ海に点在するブルーホールに生息していると言われている。ブルーホールとは洞窟や鍾乳洞など海底にある巨大な空洞が何らかの要因で崩壊し、本来浅瀬のところに突如、深い穴が開きような形で形成された地形である。

 いわば、天然の巨大なタコツボ状地形のため、ここに潜む怪物としてルスカの伝説が生まれたのかもしれない。

 北海道近海においてダイバーがタコにしがみつかれるなど、タコが人間を襲うケースも存在するし、欧米ではその奇怪な外見より昔から「デビルフィッシュ」として忌み嫌われてきたこともルスカの怪物伝説の成立を手伝ったとも言えるだろう。

 しかし、クラーケンと違ってルスカの実在がささやかれているのは、何より過去にルスカらしき巨大生物の死体が何度か漂着しているという点があるだろう。

 1896年、米国・フロリダ州セントオーガスティンの海岸に巨大なタコらしき死骸が漂着したケースは、まさにその代表だろう。吸盤こそ見えないものの、のっぺりとした頭に長く伸びた触手状の肉はやはりタコを思い起こさせる。

 別のルスカと見られる死体の写真には、流れていかないようにくくりつけられているタコの頭と並んで立つ紳士が写っている。タコの坊主頭に見える部分の高さが紳士の胸部に届くほどとなっているので、確かに伝説のルスカと同じくらいの大きさはあるように思われる。

 なお、現在ではこのルスカとみられる巨大な生物の漂着死体は特定の生物のものではなく、漂着する謎の肉塊「グロブスター」だったのではないかと見られている。グロブスターには巨大な肉ひだや房状の肉がついている形状のものがあるため、巨大なタコだと思い込んだのではないかとされているのだ。

 現存するダイオウイカを例にみれば、ダイオウイカの最大サイズは16メートルにも及ぶという。現実にはタコは同じ頭足類のイカほど大きく成長しないと言われているが、ルスカのサイズにも匹敵する大きさと言えるので、もしこの大きさのタコが実在したならば新種のタコとなることは間違いないだろう。

 もしかすると海の中には、まだ誰にも知られていない巨大な頭足類が生息しているのかもしれない。