これでは逆立ちしてもソフトバンクにはかないそうもない。中日では契約更改交渉2日目の27日にチーム2位の8勝を挙げた福谷浩司(29)と30ホールドポイントで初の最優秀救援投手に輝いた福敬登(28)の2投手が増額提示ながら保留した。

 前日の木下拓に次いで保留者は3人目。交渉の席では慶大卒の秀才・福谷が球団側に対して将来的なビジョンを明確にしてほしいと訴え、驚きの答えが返ってくる一幕があった。

 自身の来季年俸の話を差し置いて福谷がビジョンうんぬんの話題を切り出したのは、今春キャンプで同部屋となったドラフト1位新人・石川昂と野球談議に花を咲かせたことが背景にあった。

 10歳下のルーキーが口にした立派な野球観や人生観に驚き「彼らが4年後、5年後に中心選手となったとき、みんながシーズンに向かって少しでもいいモチベーションで臨めるような体制になった方がいいと思った」。だからこそ絶好の機会である契約更改交渉の場でフロントに対して「来年以降に向けて、チームがどうしたいのか」を尋ねた。

 これに加藤球団代表は「オーナーが(白井前オーナーから大島オーナーに)代わって『ビジョンを明確にしなさい』という指摘は我々球団に対してすでに言われていた。契約更改が終われば、そこは取り組まないといけない。今までそういう方針が球団としてなかったというのは事実なので、明文化するという作業はやりたい。このオフにしっかりやらないといけないということは福谷君にも言いました」と打ち明けた。

 先の日本シリーズではセ・リーグで圧倒的な強さを見せて連覇を達成した巨人が2年連続の0勝4敗でソフトバンクに敗れた。パ球団は8年連続で日本一に輝き、ファンの間でもセとパの格差について論じられる中、そもそも将来のビジョンが明確になっていなかったとは驚くばかりだ。

 しかし、済んだことをとやかく言っても始まらない。加藤代表も「球団の方針が一定していないとダメ。将来的なチームビジョンは球団が絵を描く話です」と言う。ソフトバンクが三軍制をスタートさせた2011年を最後に中日はリーグVから遠ざかっている。どう生まれ変わるのか目が離せない。