サイ・ヤング賞候補の超大物メジャー右腕は杜の都にやって来るのか。今オフ、米球界でFA市場の目玉に躍り出たトレバー・バウアー投手(29=レッズ)の動向に注目が集まっている。4日(現地時間)には球団側から規定となる1年1890万ドル(約19億8000万円)でのクオリファイング・オファー(QO)を拒否。本気モードでMLBだけでなくNPB入りも選択肢に入れている。その流れの中、メジャー関係者の間でバウアー獲得の本命として急浮上しているのが、楽天だという。


 単なる神経戦を仕掛けているわけではないだろう。バウアーはかねて「MLBとNPBからのオファーをすべて考慮する」と言い切っている。複数の米メディアによれば、右腕は来季契約で総額2億ドル超(約206憶8000万円)を希望しているという。あえて本心ではない日本行きまでチラつかせ、MLB球団とのビッグディール成立を引き出そうとしているとの見方もあるが、バウアーの「JAPAN LOVE」は決してフェイクではない。 

 実際、バウアーは「日本のオリエンタルカルチャーに大変興味がある」と公言するほどの大の親日家としてMLBでも広く知られている。昨年12月にはプライベートで来日を果たし、DeNAから横須賀市の二軍施設への招待を受けてエース・今永らと交流の場を持ったこともあった。代理人側が「バウアーは条件さえ整えばMLBにこだわることなく、NPBのどこの球団でもプレーする準備ができている」と代弁しているのは、右腕の本心とみていい。

 今季のバウアーは5勝4敗ながらもリーグ1位の防御率1・73。WHIPも同1位で0・795とし、通算73イニングで100奪三振をマークした。選手間投票での優秀投手賞に輝いており、2日に発表されたサイ・ヤング賞候補3人の中にもダルビッシュ(カブス)らとともに入っている。2015年から昨季まで5年連続2桁勝利を挙げるなど通算75勝の超大物右腕は、MLBのみならずNPBのどの球団もノドから手が出るほど欲しい存在であることは間違いない。

 そこでクローズアップされてくるのが、巨大補強を〝おはこ〟とする楽天だ。ア・リーグのメジャー極東スカウトは「MLBの中でもNPBの楽天がバウアーの獲得調査に動き出し、本腰を入れるのではないかとの情報が飛び交っている」とし、こう明かした。

「バウアー本人はツイッターでソフトバンクとDeNAに〝ラブコール〟を送ったが、現実問題として日本で2億ドル超えの破格条件を用意できる球団は限られる。巨人という説もあるが、このコロナ禍では経営のスリム化が今後求められていく上に伝統を重んじる球団である点を踏まえれば、いくらバウアーが超大物メジャーリーガーとはいえ、たった一人の選手に莫大な獲得資金をつぎ込むことはさすがに厳しいとみられている。そうなると潤沢な資金力を誇り、新興の親会社からのバックアップが見込めるソフトバンクか楽天の2択だろう」

 楽天は今オフのFA選手の獲得を凍結するとの見方もあるが、これについても「優勝したソフトバンクはともかく、楽天は4位に終わったこともあり、このまま親会社が〝今オフの補強なし〟で済ませるとは思えない」と続けた。

 またしても圧倒的なマネーパワーによる補強が見られるのか。今オフも石井GMの手腕が注目されている。