阪神・藤浪は無観客でこそ蘇る ここ数年は「甲子園でのヤジ」に自滅も…

2020年03月06日 16時30分

無観客試合で躍動した藤浪

 寂しい無観客試合もデメリットばかりではないかもしれない。この異例のシチュエーションだからこそ輝きを取り戻しそうな男がいる。阪神の悩める元エース・藤浪晋太郎投手(25)だ。昨季は自身初の未勝利に終わり8年目の今季は背水の陣だが、5日の「プロアマ交流戦」では4回1失点にまとめ、復活の兆しを見せた。ヤジのない無観客試合で別人のような投球を披露した右腕に対し、ライバル球団からは「復調の確信まで得たのでは」と驚きの声も…。球界に激震を走らせたコロナ禍が思わぬ“副産物”を生むかもしれない。

 5日の大商大戦。0―1とビハインドの6回から3番手で登板。先頭打者の四球をきっかけに二死二塁から相手の7番に左越え二塁打を浴び追加点を与えたが、その後は大学生相手に格の違いを見せつけた。

 7回以降は3者連続を含む4奪三振、無失点と立ち直って9回までを投げ切り、4回3安打1失点。四球は失点した6回の1つのみで最速は155キロ。球数も56球と「ストライクを取るのが精一杯」の不調時とは一線を画す投球を披露した。

 藤浪は「ある程度は良かったのかなと思います。いい感じに投げれたとは思いますけど、まだまだな部分もあるので、しっかりと練習していきたいなと思っています」と表情も明るい。視察に訪れた矢野監督も「良くなっている部分も多い。だからこそもうワンランク、ツーランク(上げていってほしい)。ただ一軍で投げるだけを晋太郎も求めているわけではないと思うからね」と今後のさらなる復調を期待した。

 仮にも炎上となれば開幕一軍先発ローテ―ション入りが絶望となった無観客試合でのマウンド。課題の抜け球もなく、学生相手とはいえ「この日の投球がターニングポイントになるかもしれない」と息をのんだのは、他球団から視察に訪れた関係者だ。

 ネット裏には日本ハムやDeNA、ヤクルトなど複数のライバル球団のスカウトやスコアラーが集結。そのうちの1人がこの日の藤浪をこう高評価した。「大学生相手とはいえ、正直よかったころのプロ1、2年目の藤浪を連想させるものは確かにあった」。高卒1年目で2桁の10勝をマークしたルーキー時代を思い起こさせる投球だったという。

 前回登板した2月23日の広島戦(コザしんきん)では2回を投げ、2押し出しを含む3連続四死球の大乱調で3失点。今回はいくら相手が格下とはいえ、短期間でなぜここまで“激変”できたのか。広島戦と大きく異なるのはこの日が無観客だったことだ。

 藤浪が低迷する原因の一つに挙げられているのがメンタル。本拠地・甲子園では味方へのヤジも容赦なく、ここ数年は藤浪がマウンドに上がるだけで球場は騒然となっていた。これが重圧となり藤浪は何度も自滅してきたが、無観客だとそんな心配は無用だ。

 とにかく「学生相手にもう1点もやれない」終盤に向かう状況下で、結果として「踏ん張れた」ことはメンタル面としての復調要素に挙げられる。さらに大学生相手の好投は、制球難が課題の藤浪の次回登板にも相乗効果をもたらすという。

「同じ右打者相手に投げるにしても、大学生とプロでは、体つきが全然違う。実際には広さは変わらないんだけど、(ストライク)ゾーンの見え方は(体の大きい)プロのほうが、投手からすると大きく見える。藤浪からすれば次の(プロ相手の)登板では、打席に入った打者の懐が大きく見えるはずで、(ストライクゾーンの)的が大きく見えることもあるだろう」と再びプロと対戦したときは視覚的にも投げやすくなると予測する。

 プロ野球一軍の無観客試合は今のところオープン戦までだが、状況次第では20日に開幕する公式戦でも無観客試合が続く可能性もある。そうなれば藤浪は…。いずれにしても普段とは違うテンションで開幕までの調整に苦慮する選手が多くいるなか、虎の元エースはプロ野球本来の要素とは違う環境をプラスに変え、復活への糸口をつかもうとしている。