今年度のドラフト会議が17日、都内のホテルで行われた。ドラフトで指名に成功した球団はどこか。そして失敗した球団は…。元ロッテのスカウトで本紙評論家の得津高宏氏が、本紙恒例「ドラフト診断」でズバリ採点した。

 得津氏がまず真っ先に名前を挙げた今年の「S評価」はヤクルトだ。

「球団の現状やこれまでの反省を踏まえた、素晴らしい指名だったと思います。奥川(恭伸=星稜)の1位指名を事前に公表したことで、結果的に競合を避ける意味で降りた球団もあったと思う。それでも3球団が競合しましたが、見事に引き当てました。それだけでも合格点なのですが、気を緩めることなくウエーバーで真っ先に指名できる2位で、1位級の即戦力投手の吉田(大喜=日体大)を指名。3、4位も即戦力投手で、奥川も1年目から一軍で通用する選手。ひょっとすると来季のヤクルトは、投手王国かもしれませんね」

 続いて「A評価」としたのは西武だ。

「1位で佐々木(朗希=大船渡)は外しましたが、すぐさま即効性のある現実的なドラフトにシフトチェンジ。外れ1位で社会人屈指の右腕・宮川(哲=東芝)の競合で巨人に勝ちました。ここもチーム事情で投手中心の指名になりましたが、2位の左腕・浜屋(将太=三菱日立パワーシステムズ)もすぐ一軍で使えると思います。来季の成績に直結するドラフトになったのでは。独立リーグから3人も獲得するなど、独自の情報網があることも感じさせます」

 また、評価自体は「B評価」も、限りなく「Aに近い」と高く評価したのが、高校生中心の指名となった阪神だ。

「異論はあるかもしれませんが、私は甲子園のスターを集めたように見える阪神の今年の指名には大賛成ですね。これまでの阪神は即戦力野手を指名してきた印象が強いのですが、球団の方針が変わったのでしょうか。ただ、藤浪がダメになったみたいに、ちゃんと育てられるかとも言われているようですが、藤浪だって、ダメになったのは最近のこと。一時期不振だった3位の及川だって、二軍でしっかり下半身を作ることができれば、球界を代表する左腕になる可能性を秘めている。期待感しかありません」

 同じく「B評価」は1位で石川の競合に勝った中日で「本来なら奥川や森下に行きたかったのでしょうが、競合を避けたつもりが競合してしまい、ホッとしているのでは。おかげで2位以下を投手中心に固めることができました。その2位で即戦力左腕の橋本を確保できたのも大きかったと思います」。

 続いて「C評価」としたのがロッテ、ソフトバンク、広島、日本ハム、DeNA。

「ロッテは1位だけでしたね。佐々木は育ててからなので、即戦力も欲しかったが、即戦力投手は一人も獲れませんでした。いまさら外野手を獲ったのも疑問です。ソフトバンクは1位で佐々木を見送ってまで石川に行ったのに、それを外したのは厳しかったですね。野手の高齢化への対応が課題なチームですから、今年の指名内容には切迫感がありましたね。広島は森下を単独指名できるとは思ってなかったでしょうが、即戦力投手はもう一人ぐらい欲しかった。逆に日本ハムは即戦力投手を立て続けに指名できましたが、打力に問題のないヤクルトや西武とは違います。バランス的に『うーん』という感じです。DeNAは1位で高校生野手の森を単独で行きましたが、外れ1位でもよかったんじゃないですかね。筒香がいなくなるので絶対に獲りたいという信念は伝わってきましたが、2位で左のいい投手を取れたのでまずまずでしょう」

 そして…。残念ながら“失敗ドラフト”となってしまう「D評価」を受けたのは、巨人、楽天、オリックスだった。

「巨人とオリックスは1位で2連敗したのはさすがに痛かった。クジなので仕方がないですが、その後もリカバリーできなかった印象です。オリックスは近年いい即戦力投手を確保できていたのに、それができなかった。巨人は2位で狙っていた海野を目の前でソフトバンクにさらわれてしまったようですし、奥川とバッテリーを組んだ山瀬を5位で指名しましたが、何か将来的なことを考えてのことなのでしょうか。こういう指名は好みの問題なのでしょうが、私は好きではありません。楽天は1位と2位で左打ちの野手を指名しましたが、チームに同じようなタイプがまた増えましたね。右打ちの大砲は助っ人に任せるという事情なのでしょうが、どれだけ左打者が好きなのかな…と。バランス的に評価を下げさせていただきました」

 もちろん評価は、あくまで現時点で「うまいドラフト」ができたかどうか。各選手の本当の評価は、これからの活躍しだいだ。

【得津氏の評価】

S=ヤクルト
A=西武
B=阪神、中日
C=ロッテ、ソフトバンク、広島、日本ハム、DeNA
D=巨人、楽天、オリックス