【元局アナ青池奈津子のメジャー通信】「出た~! 裸にダイヤモンドとジャケット!」(これ、3人くらい)
「出た~! 全身バラ柄スーツ!」
「出た~! クリスチャン・ディオールの文字が並ぶど派手シャツ!」
「全身ピンク!」
「紫!」
「アクアマリン!」

 10年ぶりのオールスターのレッドカーペット取材。真夏の太陽に照りつけられ汗だくだったが、個性あふれる選手たちのファッションを、なかば仕事を忘れて楽しんでしまった。中でも、キラキラを通り越してギラギラと輝くジュエリーを、誇らしそうにまとうラテン系や黒人選手などの装いは、フェスティバル感を大いに盛り上げてくれ、気持ちよかった。

 ベストドレッサーは誰かを聞いて回ったら、サンティアゴ・エスピナルやグレゴリー・ソトが「自分」と自信たっぷりに言ったのも爽快だった。

 スーツ姿が多い中で、ホワイトソックスのティム・アンダーソンは「アミリ」というデザイナーブランドの黒キャップ、シルバーのジャンパー、骨模様の入った黒デニムに、ルイ・ヴィトンのスニーカー、イニシャル「T.A」のカスタムジュエリー、太めのチェーンネックレス2本とダイヤのピアス、腕時計、ブレスレット。まさに、ゆるさとまぶしさの絶妙な融合スタイル。

「クリーンで、体にしっかりフィットし、少しばかりマッチングするもの。やりすぎない程度に。チルなんだけど、大したことが合って、見栄えのするもの」
 3週間ほど前にクラブハウスで「ファッションが好き」と話してくれたティムのスタイルポリシーそのままで、お見事だった。

 ちなみにどのくらいファッションが好きかというと「自分の持っている服や靴を全部覚えているし、もし今の家から引っ越すとしたら、荷造りは誰にもやらせず全部自分で運ぶ。たとえ何時間かかっても。妻にも触らせない。だって僕のだもん」。笑ってはいたが、目は真剣。

 シカゴの家には服と靴をしまう自分専用のウオークインクローゼットと、地下には「靴の部屋」があるのだとか。お気に入りのその場所には、軽く見積もっても靴が300足以上。アリゾナ州にある自宅にも別でコレクションしており、スプリングトレーニングはその靴を久しぶりに履けるという意味でも楽しみなのだという。

「見た目が格好良かったら、プレーも格好良く見える。格好いいと、お金もたくさんもらえる」と冗談っぽく言っていたが「野球やっていると、常に野球のことを考えているし、フィールドにいる時間も長い。頑張ったことを表す何かが欲しい。ドレスアップすることや自分の似合うものを身に着けることは、自分の気分を上げてくれる。それは、いいプレーにつながる。つまり自分は一生懸命、カッコよく見えるように頑張っている、ということになるのかな」

 このティムのこだわりは、もしかしたら生い立ちと関係しているかもしれない。

「子供のころは、あまり多くのものを所有できないでしょう? 高いし、そんなに多くのものを持てない。両親は、いつも白と黒の靴を与えてくれたんだ。その2足だけ」

 ティムが両親と呼ぶその2人は、血縁上ではおじとおばにあたるのだと後で知った。

☆ティム・アンダーソン 1993年6月23日生まれ。29歳。右投げ右打ちの遊撃手。185センチ、83キロ。2013年のMLBドラフト1巡目(全体17位)でホワイトソックスから指名されプロ入り。16年にメジャーデビューし、99試合で打率2割8分3厘、9本塁打、30打点。以降レギュラーとして定着し、18年は20本塁打、26盗塁、19年は打率3割3分5厘をマークした。20年シルバースラッガー賞(遊撃手)。21年にオールスターに初出場。今年の球宴にも2年連続で出場した。