「フープスネーク」またの名を「スネーク・オブ・ホイール」——。米国やカナダ、そしてオーストラリアなどの比較的歴史の浅い国で民間伝承として語り継がれる生き物である。

 その名の通り、輪になっているヘビだ。何も胴体が途中で2つに分かれて輪になっているわけではなく、尾をくわえてフラフープのように輪っか状になるヘビのことだ。

 いかにもありえそうな、よく考えるとなさそうな、都市伝説的な生態のヘビである。現在でもフープスネークが実在するか否か「見た」「いや、あり得ない」といった論争が繰り広げられる存在なのだ。

 フープスネークが輪っか状になるのには理由がある。それは転がって高速移動するためだ。獲物を捕まえる時、また天敵から逃げる時に輪っかになって傾斜を転がるのだという。

 傾斜、それも下方向に移動したい場合のみの生態とは考えられないので、実在するとしたらウロコを動かすなどして転がる勢いをつけるのだろうか。また、体を大きく見せて威嚇する可能性も考えられる。

 輪っか状の生物が高速で移動してきたら天敵などは驚くのではないだろうか。逃亡するための機能としては効率的にも思える。

 体色は鮮やかで、毒を持ち、性格も獰猛という説もあるが、体色に関しては他の生物を威嚇するためのもので、逃げやすいという性質を助けるかもしれない。

 このフープスネークから逃れるために人間が考え出した手段は「輪をくぐり抜ける」だ。

 これはいかにも都市伝説というか空想の産物といった感じがするが、回転を利用して移動するからとっさに反対方向に転換できないなどと、もっともらしい理由もあるのだ。

 米国やオーストラリアといった土地で開拓が進んでいなかった時代、その広大な自然に対峙した人間が、自分が体験した理解不能な事象などを説明するために恐ろしい生物「フィアサム・クリッター(見るも恐ろしい生物)」を生み出していった。

 フープスネークはそんなフィアサム・クリッターのうちの一つである。現在は生物学的には存在し得ないという説のほうが支持されている。

 開拓者たちが恐ろしかった体験を怪物に置き換え、それが民間伝承として広がり、神話のなかった国に根づいていったのだ。