「ナワル」という存在はUMA(未確認生物)というよりは、伝承上の生き物として知られている。メキシコの民間信仰に伝わり、動物に変身する能力を持ったシャーマンや人々を守る動物霊を指す。この図版は人がナワルへと変身した姿を描いたものである。ナワルになる能力を持った人は、その地域において指導者になるなどカリスマ性があったようだ。

 ナワルという言葉はアステカ人が使っていたナワトル語で、この精霊を指すだけでなく一種の概念のようなものといわれている。

 その先住民たちの神は「もうひとつの自我」を持っていて、そちら側の自我の力で獣や自然現象に返信すると考えられていたのだ。選ばれた人の中には同じような能力を持ち、睡眠中に見る夢を経て変身するとされていた。

 アフリカの一部にはヒョウやライオンの皮をかぶって踊る呪術的な儀式が伝わっていて、踊っているうちに精霊が憑依(ひょうい)してヒョウ人間やライオン人間となってしまうそうだ。日本には主に西日本で広く信じられてきた犬神という犬霊の憑き物がある。このように、動物には特別な力があり、その力を人間に憑依させることで成り立つ呪術が多く見られる。

 メキシコのシャーマンが変身する対象はヤギやジャガーなど多岐にわたり、絵や石像、民芸品としてその姿を確認できる。そんな精霊や妖術のようなものであるナワルだが、メキシコでは実際に死骸が発見されているという。

 2013年9月、線路上で手足が分断された獣のような人型のような謎の生物の死骸が映った動画がユーチューブにアップロードされた。撮影された場所はメキシコ中部のハリスコ州テキーラ。エル=オペーニョ文化が繁栄し、独特な土偶などが発掘される地である。もちろん、テキーラはお酒のテキーラの語源であり特産品でもある。

 その死骸の姿はツルツルとしたピンクで大きな眼球を持ち、人間よりやや小さいようだ。このような姿から地元の人たちの間では「ナワルなのではないか?」と噂されている。ナワルと特定した理由は鋭い牙と4本の指だという。ちなみに死骸にはハエが群がっていた。それからも様々な姿のナワルの死骸が目撃されているとの話だ。

 2014年1月にはメキシコ・ベラクルス州の港湾都市ベラクルスで、やはり干からびたような死体が発見されている。こちらはやや爬虫類のような見た目でグレーに近い濃い茶色で、体毛もウロコもないガサガサとした体表だ。ハッキリと尻尾があり、狼のように大きな口が特徴的である。

 同じ年の8月、同じくベラクルス州のサン・アンドレス・トゥストラでは有刺鉄線に引っかかって死んでいるナワルらしきものが目撃された。こちらは1月に発見されたものと似た形状をしている。

 これが新種の生物なのか、精霊なのか、人間が獣化した姿なのか、はたまた捏造なのかいまだ判明していない。しかし、これだけハッキリとした未確認生物の映像があるので真相の解明が急がれる。ひょっとしたらUMAというよりも妖怪のような存在なのかもしれない。