フィギュアスケート男子で世界選手権3連覇中のイリア・マリニン(米国)は、大舞台での失敗を通じて〝新境地〟にたどり着いた。

 2月のミラノ・コルティナ五輪は金メダル最有力候補だったが、フリーでミスが目立って8位どまり。演技後には「五輪のプレッシャーは本当に人を追い詰める。五輪の呪いがあると言われるように、金メダルの本命は必ず五輪で失敗する。まさにそれが起きたんだ」と吐露。それでも、3月の世界選手権では貫禄の演技で、再び頂点の座を勝ち取った。

 絶望の淵に立たされたマリニンは、どのように短期間で立ち直ったのか。米誌「ピープル」は「世界選手権に向けて、新たな精神的アプローチを取り入れた。それが好成績を収めた理由だとマリニンは考えている」と指摘。マリニンは同誌に「正直言って、他人の期待やプレッシャーを気にしないこと。本当に自分のためにやること」と勝因を語った。

 世界選手権はミラノ・コルティナ五輪のように、追い詰められたメンタリティーで氷上に足を踏み入れることはなかった。「僕にとって、世界選手権は『これが最後のシーズンの演技だ。さっさと終わらせよう』という感じだった。それほど大きなプレッシャーや緊張感はなかった」と明かした上で「五輪が終わった後、全く違う心構えで臨まなければならなかったというのも事実。自分がこのスポーツをこれほど愛する理由を改めて考えて、楽しむように努めることも重要だった」と振り返った。

 絶対王者としての重圧を経験したことで、原点に立ち返ったマリニン。世界選手権の結果は「本当にホッとしたけれど、同時にメダルがすべてではないということも学んだ」。大きな壁を乗り越えたスケーターは、来季以降も日本勢にとって脅威になりそうだ。