トランプ米大統領は23日、「米国とイランは『非常に良い協議』を行った」として、イランの発電所などへの攻撃を延期するよう国防総省に指示した。21日に「48時間以内にホルムズ海峡を開放しなければ、発電所を攻撃する」という言葉を翻したことになるが、誰と何を交渉したのかを明言しないまま「5日間」の延期となった。一方、交渉相手とみられるイランの実力者モハンマド・バゲル・ガリバフ国会議長は「米国との交渉は存在しない」と完全否定した。どうなっているのか。

 トランプ氏はイランの「非常に理性的な人物たち」と交渉していると発表した。イスラエル紙「エルサレム・ポスト」や米メディア「ポリティコ」は関係者からの証言として、「ガリバフ国会議長」だと報じた。

 米国はイランの誰と交渉すればいいのか分からない状態といわれている。本来の意思決定者は、3代目の最高指導者モジタバ師だが、表に出てこず、爆撃で負傷したとされるため安否すら不明だ。イランのナンバー2で、モジタバ師に代わり国を運営したとされる文民指導者のラリジャニ氏も17日に死亡していたことが発表された。

 米国事情通は「米政府は、誰が意思決定を行っているのかを見極め、連絡ルートの確立を試みている中で、ガリバフ氏の名前が挙がりました。しかし、ガリバフ氏の否定コメントどおり、まだ連絡できていないようです。いずれ指導者になる可能性があるガリバフ氏と接触し、人物を見極めるための5日間の猶予なのでしょう。また5日間というのは、交渉決裂時のための攻撃態勢を整える期間でもあります」と指摘する。

 米・イスラエル軍の2月28日の攻撃で、前最高指導者ハメネイ師が死亡し、現在までに他の主要な指導者数十人も死亡している。

「米メディアによると、CIAやモサドは、モジタバ師が戦争を主導している兆候はないとみています。アラグチ外相は権限がないようです。ペゼシュキアン大統領も中枢人物ではない。イラン革命前の王政の皇太子で米国に亡命中のパーレビ氏は、イランが受け入れない。そこで、戦争終結の交渉相手としては、イスラム革命防衛隊指導部とガリバフ氏の2者に絞られているようですが、最強硬派の革命防衛隊指導部はまず無理でしょう」(同)

モハンマド・バゲル・ガリバフ国会議長(ロイター)
モハンマド・バゲル・ガリバフ国会議長(ロイター)

 ガリバフ氏は元革命防衛隊将軍で元テヘラン市長。現在、イランの意思決定における最上位の文民指導者とされ、モジタバ師の側近でもあるという。

 軍事事情通は「トランプ政権は、ベネズエラのマドゥロ大統領を排除し、米国のパートナーとなりえるデルシー・ロドリゲス大統領代行とすげ替えた〝ベネズエラモデル〟を再現可能か調査しているそうです。今のところガリバフ氏はそうではないようですが、革命防衛隊に顔が利くという点が大きいのでしょう」と指摘している。