【取材の裏側 現場ノート】夏冬通じ五輪で日本女子最多となる10個のメダルを獲得したスピードスケートの高木美帆(31=TOKIOインカラミ)は〝気遣い〟の心を兼ね備えたアスリートだ。

 長きにわたってエースとして活躍した高木は4日、世界選手権(5日開幕、オランダ)を最後に現役を引退すると発表した。自身のインスタグラムで「スケート人生の一区切りとなる瞬間をここまで応援してくださったみなさんとともに迎えたい」と明かしたが、このタイミングでの発表は高木らしさが垣間見えた。

 氷上ではもちろん、リンク外でも摂取する砂糖の種類にまでこだわるストイックさで猛者たちと戦ってきた。まさに〝孤高の存在〟という言葉がぴったりな一方で、気配り上手な姿が印象的だった。

 その一つが後輩への振る舞いだ。ある日、後輩が高木の使用するインナーを見て「私も使ってみたいです」と相談。すると高木はスポンサー関係者に「後輩がインナーに興味を持っています」と連絡を入れるなど、橋渡し役を買って出た。同関係者は「後輩に慕われているのを感じた。自ら商品の良さを発信してくれるのはうれしい」と語っていた。

 常に感謝の気持ちを言葉、行動で示してきた。だからこそ、2023年に「team GOLD(チームゴールド)」を結成した際は、イフイング社の展開する現所属先が背中を押してくれた。

 冬廣應尚代表取締役社長は「今までのやり方で金メダルに届かなかったら、後悔しか残らない。チームを作って、たとえダメだったとしても、やるだけのことをやれば後悔はないと思う。だからぜひやってくださいと伝えた」と当時を回想。ミラノ・コルティナ五輪は最大の目標だった「1500メートルでの金メダル」を逃したものの、周囲の後押しが高木の支えとなっていた。

 インスタグラムにつづった言葉は高木なりの決意表明だろう。スケート人生の全てが詰まった最終レースは、新たな人生のスタートとなる。

(運動部・中西崇太)