MLB中継の〝ストライク表示〟が、2026年シーズンから静かに消えることになりそうだ。ABS(自動ボール/ストライク・チャレンジ)システムがレギュラーシーズンで本格導入されるのに伴い、MLBのテレビ中継ではおなじみのストライクゾーンボックスは残るものの、投球がボールかストライクかを断定して示す表示を取りやめる方針だという。

 円が塗りつぶされてストライク、くり抜きでボール――あの「答え合わせ」が、少なくとも画面上では事実上消える。これら一連の動きを「シカゴ・サンタイムズ」や「ニューヨーク・ポスト」など複数メディアが報じており、MLB関係者の間でも波紋を広げている。

 ポイントは、ABS導入そのものより「情報の締め付け」だ。同制度導入に基づくチャレンジを行えるのは打者・投手・捕手のみ。判定直後の短時間で意思表示し、外部の助言も禁じられる。それでもMLB側は念には念を入れ、中継映像や球場内で見られる低遅延フィード(遅れが極端に少ない映像)が〝指南役〟になる余地を限界まで潰しにかかった。

 MLB側の具体策は細かい。まずMLB公式の「Gameday」など投球位置データに約5秒の遅延を入れる。表示は公式データサイト「Baseball Savant」も含め、同じ見え方に統一していくという。さらに球場内で見られる低遅延映像では、ストライクゾーンボックスや投球位置ドットを表示しない。同ゾーン付きの放送フィードも「最低9秒程度」の遅延を設ける運用だとされる。

 家庭の視聴者が、もしかすると戸惑うことになるかもしれないのはここからだ。映るのは〝位置〟までで〝正解ラベル〟は出ない。これまで機械が代行してきた「今のは入った/外れた」を、もう一度、自分の目と感覚で受け止めることになる。

 ただし、チャレンジが入った瞬間は逆に明快だ。打者・投手・捕手のいずれかが頭を軽くたたく動作で開始され、球場ビジョンと中継にアニメーションが出て結論が示される。2025年春の実験では1試合平均4・1回のチャレンジが起き、所要は平均13・8秒、判定が覆った割合は52・2%だったという。

 01年に米スポーツ専門局「ESPN」が「Kゾーン」を導入して以来、ゾーン表示は「ルーティン」になった。だがABS時代にMLBが優先したのは「見やすさ」よりも「抜け道の封鎖」――。そんなメッセージが透ける。