8日、投開票が行われる第51回衆議院議員総選挙に関するマスメディアや政治評論家の関心は専ら政局的なものだが、筆者はその背後にある政治構造の転換に目を向ける必要があると考える。

 現在の日本の政治には、理念的対立が存在する。これは、特定の政党の区分とは一致しないので、甲型、乙型に区分する。甲型が国家と個人を直結させる傾向が強いのに対して、乙型は国家と個人の間に社会を挟み、社会を強化することが国家の強化につながると考える。社会の中核を形成するのは、個人的利益を代表する個人や個別企業でも、国家の利益を代表する機関でもない中間団体である。中間団体には、農業協同組合、生活協同組合のような協同組合、医師会、弁護士会のような職能集団、労働組合、宗教団体などがある。

 過去の歴史を振り返ると日本の内政が混乱するのは国際秩序が激変するときだ。ロシア・ウクライナ戦争、イスラエルのガザ作戦などによって力によって既存の国際秩序を変化させることが現実になった。この流れに米国も加わっている。年始に起きたアメリカ軍によるベネズエラ攻撃がその典型だ。日本の政治的対立は、こうした国際秩序の激変に対応する動きだと筆者は見ている。

 甲型は、大統領型の首相による政治主導で国家機能を強化することが重要と考える。防衛力を飛躍的に増強し、スパイ防止法により国内統制を強化する必要があると考える。甲型は社会よりも個人や個別企業が強くなり競争力をつけることで国家が強くなると考えている。サッチャー元英首相が「社会は存在しない」と述べたことを髣髴させる。

 乙型は、国家機能強化の前提になるのが社会的結束と考える。対外的緊張が高まると、中間団体を国家に統合しようとする動きが強まる。この流れは、社会を解体し、中長期的に国家機能を弱めることになる。従って、中国やロシアなど近隣諸国との緊張を激化させる急激な防衛力強化には慎重だ。そして外交による対話と妥協を重視する。スパイ防止法に関しても社会を萎縮させる可能性があるため、社会的コンセンサスを得るために時間をかける必要があると考える。国家、社会のいずれに力点を置くことが日本国家と日本国民にとって有益なのかが、今回の総選挙で見えてきた本質的争点なのだ。