東京・上野動物園のシャオシャオとレイレイの2頭が来年1月下旬に中国へ返還されることとなり、パンダ愛好家の悲しみは計り知れない。事前申し込みなしで観覧できる最後の日となった21日は大勢の人でにぎわった。上野のパンダが暮らすパンダ舎「パンダのもり」の設計にかかわった大阪芸術大学芸術学部教養課程主任教授で動物園デザイナーの若生謙二氏が振り返った。
若生氏は2022年、「パンダのもり」の設計で日本造園学会作品賞を受賞した。上野のパンダ舎に関わるきっかけは著書「動物園革命」(岩波書店=2010年)だったという。
若生氏は「本を読んだ東京都の担当者から『東京都の動物園を再生しようと考えているので、設計指導をお願いしたい』との依頼を受けた。都からの依頼が終了した後は、建築設計会社からの依頼により、実施設計から施工にまで携わらせていただいた」と説明。パンダ舎ができるまでに多くの人が関わったとし、「若手の後継者を育てる機会にもなった」と目を細めた。
パンダの屋内展示スペースの3面の壁には、緑の景観写真が張られている。それは若生氏らが考案した動物の展示手法の一つだった。「一般に動物園の屋内展示の壁面は、コンクリートで無地の場合が多いのですが、ここの展示スペースには動物の生息地の写真を使ってるんです」と明かした。
完成した「パンダのもり」について、「私が見に行った時、パンダは木登りをしていて、思った通りに過ごしているなと思いました。一般の人々の評価も『いいパンダ舎ができましたね』とおおむね好評です」と手応えを感じている。
このように若生氏は動物園デザイナーとして、全国の動物たちをオリから生息地に近い環境へと造り変えつづけている。その原点について「子供のころから動物と動物園が好きだったんです。大学で造園学を学んで、造園から動物園を変えられることに気づいたんです」と話した。
大阪の「天王寺動物園」も手がけた。同動物園が移転の危機となった際、動物園からの依頼で若生氏が提案したのが、生息地の環境で動物を展示するという構想であった。約20年前にできた「アフリカサバンナ」で国土交通大臣賞を受賞。シマウマとライオンが同じ空間にいて、のびのびと暮らす様子は、今でも来園者に驚きと感動を与えている。
「芸大に赴任した時、すでに天王寺動物園の計画に関わっていたので、天王寺にサバンナができた時、みんな見に来たんですよ。長野市や横浜市の動物園の計画に携わっていた公園課の方たちも見に来られて、それらの計画にも参画するようになり、そのころから本格的に動物園のデザインをやるようになったんです」
最後に「地形に変化を与え、生き物と植物を展示して、動物も暮らしやすくて、観客も感動するという光景を見ると、やって良かったなと思います。このような機会を与えていただくすべてに感謝です。大学や動物園、工事に関わる多くの方にもありがとうと言いたい」と感謝を口にした。
23日から上野動物園のパンダ観覧は事前申し込みが必要になる。観覧できる最後の日は来年1月25日だ。
☆わこう・けんじ 1954年大阪府生まれ。93年東京大学農学博士、94年大阪芸術大学助教授就任。現在、日本展示学会会長、動物園ランドスケープ会議代表、ヒトと動物の関係学会会長、日本造園学会常務理事と関西支部長を歴任。芸大赴任後、動物園デザイナーとして全国で生息環境展示の実現に取り組む。作品は日本展示学会賞(長野市茶臼山動物園「オランウータンの森」)、国土交通省都市局長賞(山口宇部市ときわ動物園「中南米の水辺」)などを受賞。2024年「日本造園学会上原敬二賞」受賞。













