2022年に安倍晋三元首相を銃撃し、殺人などの罪に問われた山上徹也被告の奈良地裁での裁判員裁判で、検察側は18日、無期懲役を求刑し、結審した。死刑求刑するかどうかが注目されていたが、無期懲役にとどまったことで、判決は有期刑の可能性も高く、安倍氏の支持者からは不満の声も上がっている。

 元首相が参院選の応援演説の最中にパイプ銃で襲われ、死亡した事件は日本のみならず世界中に衝撃を与えた。被害者が1人の場合は死刑にはならない永山基準があるものの、2007年に長崎市の伊藤一長市長が銃撃された事件では「民主主義の根幹を揺るがす」と一審で被告に死刑判決が出た例がある(控訴審の無期懲役で確定)。

 山上被告に対し、検察側は論告で、生い立ちや母親が世界平和統一家庭連合(旧統一教会)にのめり込んだことで家庭が壊された背景は否定できないとしたが、教団幹部ではなく安倍氏をターゲットにしたことに「納得できる説明はない。論理的に飛躍がある」と断罪。「衆人環視の中で殺害し、わが国の戦後史に前例をみない犯行だ」としたが、従来の量刑相場通りとなる無期懲役の求刑となった。

 公判を通じ、犯行動機が政治的テロと立証できなかったことや安倍昭恵夫人の心情も大きい。この日、昭恵氏の代理人が書面で意見陳述し「夫に心残りがあるとすれば銃弾に弾き飛ばされた拉致被害者とその家族への思いだったと思います。ブルーリボンバッジは割れることはありませんでした。拉致被害者を救出する思いとともに割れずに私の元へ戻ってきた。(中略)被告人には自分のしたことを正面から受け止め、罪を償うように求めます」と読み上げられた。公判前から「恨みは持ちたくない」と極刑までは求めない考えを示していたが、公判を通じても変わることはなかった。

 弁護側は「最も重くても懲役20年にとどまるべき」と主張した。焦点は無期懲役か有期刑かに移り、紀藤正樹弁護士はXに「実務上は有期刑が選択される公算が高まりました。山上被告には生きて罪を償ってほしいという国の意思の表れでもあります」と予想した。判決は来月21日に言い渡される。