【シン・リジィ/脱獄(1976年)】

 アイルランドの国民英雄的バンドの最高傑作。ツインリードギターのソリッドかつスリリングなサウンドにベースでフロントマンのフィル・ライノットの個性的なボーカルという編成で世界的人気を得た。

 結成は1969年だが当初はアイリッシュ音楽的要素が強く、ツインリードギターという鉄壁のスタイルが完成したのは74年からだった。メンバー変遷を経て新たに加入したブライアン・ロバートソン、スコット・ゴーハムがレスポールでツインギターを弾く布陣が完成し、バンドは黄金期を迎える。

 同作はバンドの6枚目となり「脱獄」をテーマにしたコンセプトアルバム的な色合いが強く、表情の豊かなメロディーの曲がズラリと並ぶ。これから始まるドラマを期待させるような冒頭の「脱獄」、憂いを帯びた「ロメオとロンリー・ガール」、バンドの代表曲ともなった名作「ヤツらは町へ」、切なさが漂う「ファイト・オア・フォール」から「カウボーイ・ソング」への流れなど捨て曲は1曲もない。冒頭からラストの「エメラルド」まで息もつかせないスリリングな展開が続く。

「ヤツらは町へ」はアイルランドで1位、全英8位、全米12位とバンド最大のヒット曲となり、アルバムは全米18位、全英10位を記録して世界中で200万枚を売り上げた。

 何よりも魅力的なのはフィルの「声」だった。何かに突き動かされるような切実感は聴く者の胸に突き刺さり、ツインギターに挟まれながらも独特の「切なさ」を表現していた。バンドは83年に解散し、フィルは86年に36歳の若さで急逝するが、いまだに「アイルランドの英雄」として多くのミュージシャンに影響を与えている。