【音楽タイムマシン】
今回の「音楽タイムマシン」は、今から50年前の1975年にリリースされたソウルミュージックの名盤を特集。この年はロックが大豊作だったが、ソウルも名作とされるアルバムが多くリリースされ、今でもヒップホップでサンプリングされている曲は数え切れない。音楽シーンに影響を与え続ける75年のソウル名盤、ヒット作5枚を厳選してお送りします(順不同)。
【アイズレー・ブラザーズ/ザ・ヒート・イズ・オン】
アイズレーは1950年代からボーカルグループとして活躍し、70年代からファンク路線に転向すると多くの名作を生んで黄金時代を迎えた。同作は強固かつ刺激的なグルーヴ感とメロウなメロディーが共存するスタイルを確立させた名作で「ファイト・ザ・パワー」がヒットした。まさにアイズレーの全盛期だった。
73年の「3+3」、76年の「ハーヴェスト・フォー・ザ・ワールド」、77年の「ゴー・フォー・ユア・ガンズ」、78年の「ショウダウン」など完璧なアルバムを出し続けたこの時代のアイズレーはまさに無敵で「サマー・ブリーズ」「ザット・レディ」などのヒット曲も量産。後続のバンドに大きな影響を与えた。また83年の「ビトゥイーン・ザ・シーツ」はメロウ・ファンクの傑作とされている。
【カーティス・メイフィールド/ゼアズ・ノー・プレイス・ライク・アメリカ・トゥデイ】
ニューソウル時代を代表する巨人カーティスの最高傑作。独特の切迫したファルセットボイスで米国が抱える人種差別や貧困問題、そして祈りに近い美しいバラードが素晴らしいメロディーに乗って歌われる。
リズムはスローで音数は少ない。独特のグルーヴ感で統一されており、それが曲の素晴らしさを際立たせている。冒頭の緊張感に満ちた「ビリー・ジャック」から緩やかな「ウェン・シーズンズ・チェンジ」、そして美しいラブバラードの名作「ソー・イン・ラヴ」に入った瞬間は、暗雲が消え、青空が目前に広がるような感動を覚える。
続く「ジーザス」も文字通り神々しさに満ちた素晴らしいナンバー。御大・山下達郎もフェイヴァリットアルバムに挙げている。全てが名曲の奇跡的な名盤である。
【スモーキー・ロビンソン/クワイエット・ストーム】
モータウンの副社長としてザ・ミラクルズで1960年代に大ヒットを連発した大御所の3枚目のソロアルバム。ファーストもセカンドも素晴らしいが、このアルバムでスモーキーは大きなムーブメントを起こしている。
ワシントンのFM局でこのアルバムがオンエアされると、ミディアム・テンポでリラックスしたリズムのソウルは「クワイエット・ストーム」とジャンル分けされるようになり、多くの後続アーティストを生んだ。
内容はもちろん素晴らしく、全曲でスモーキーの抜群の歌唱力とテノールが冴えわたる。表題曲はファン、評論家からも高く支持され、ムーブメントを代表するスローバラードとなった。アルバムからは「ベイビー・ザッツ・バカッチャ」「ジ・アゴニー・アンド・ジ・エクスタシー」「クワイエット・ストーム」のヒット曲が生まれている。時代の雰囲気を反映した名盤だ。
【アース・ウィンド&ファイアー/ザッツ・ザ・ウェイ・オブ・ザ・ワールド】
日本はもちろん世界中にディスコブームを呼んだEW&F、中期の名作。ゴージャスでキラキラしたディスコサウンドには至っておらず、正統派のソウル/ファンクの名盤で、邦題は「暗黒への挑戦」。時代の先端を行く画期的な音だった。
とにかく名曲揃い。捨て曲は1曲もない。冒頭を飾る「シャイニング・スター」から「ザッツ・ザ・ウェイ・オブ・ザ・ワールド」への流れは感動的。また重厚なバラード「リーズンズ」、軽快な「ハッピー・フィーリン」、そして「オール・アバウト・ラヴ」など珠玉の名曲が胸を打つ。
EW&Fは同年に初のライブ盤「グラティチュード」も全米チャートに送り込み、1976年も名盤「スピリット」を生み出す。その後、70年代後半から派手なディスコ路線へと踏み出して大ヒットを連発するのだが、本質はやはり70年代中期にあった。ある意味、ファンクのスタイルに革命を起こしたバンドだった。
【デヴィッド・ボウイ/ヤング・アメリカンズ】
賛否両論あるだろうが“変化球的”1枚を入れたい。異星人「ジギー・スターダスト」として一世を風靡したボウイが一心転機、米フィラデルフィアに飛んでソウルに取り組んだ傑作である。題名は名門モータウンのキャッチフレーズでもある。
前年の「デヴィッド・ライブ」からグラムロックから脱却し、素顔のボウイとして大きな転換期を迎えていた。いわゆる「プラスティック・ソウル」と呼ばれ、現地の超一流のミュージシャンをバックにボウイ的ソウルを展開。人気番組「ソウル・トレイン」にも出演した。かつての異星人は見る影すらなくなり、ファンを戸惑わせたのも事実である。
だが気まぐれではなくボウイは本気だった。元ビートルズのジョン・レノンが参加した名曲「アクロス・ザ・ユニバース」をソウル的に解釈して新境地を開いた。「ヤング・アメリカンズ」もヒットし、ジョンが共作・参加した重いスローファンク「フェイム」はボウイにとって初の全米1位を記録した。
常に変化を求めるボウイは翌年の「ステイション・トゥ・ステイション」ではエレクトリックサウンドに回帰し、1977年「ロウ」からはいわゆる「ベルリン3部作」の制作に没頭する。ソウルへのアプローチはこの1枚で終わったが、常に「異端者」としての立場を追求するボウイにとっては本領発揮の名盤となった。
【その他の1975年名盤10選(順不同)】
*アラン・トゥーサン「サザン・ナイツ」
*アレサ・フランクリン「ユー」
*スタイリスティックス「ユー・アー・ビューティフル」
*アル・グリーン「アル・グリーン・イズ・ラヴ」
*ウォー「ホワイ・キャント・ウィー・ビー・フレンズ?」
*ルーファス&チャカ・カーン「ルーファス・フィーチャリング・チャカ・カーン」
*ミニー・リパートン「アドヴェンチャーズ・イン・パラダイス」
*ダリル・ホール&ジョン・オーツ「サラ・スマイル」
*テンプテーションズ「ア・ソング・フォー・ユー」
*ロバータ・フラック「フィール・ライク・メイキン・ラヴ」
















