【音楽タイムマシン】
現在は音楽が多様性を極め聴取方式はサブスクが中心となり、世界的にフィジカルなフォーマットはアナログに再移行する複雑な状況となっており、同時に往年のロックやソウルを見直す機会が増えている。特に今から50年前の1975年は多くのビッグネームが名盤をリリースした「豊作」の年でもあった。今回は50年前にリリースされたロックの名盤「ベスト5」を厳選してお届けします(順不同)。
【ボブ・ディラン/血の轍】
“ロックの神様”ディランが打ち立てた金字塔的アルバム。長いキャリアの中でも1、2を争う傑作とされる。
夫婦関係の破たんという個人的な体験の直後の作品だったが、楽曲はどれも素晴らしい。アコースティックかつディランにしては珍しく穏やかでメロディックな楽曲が多く、歌詞は難解ながらも歌声は力強さを備えつつもナイーブで繊細な抒情性に満ちている。
「ブルーにこんがらがって」「運命のひとひねり」「きみは大きな存在」「愚かな風」「おれはさびしくなるよ」と美しいナンバーで畳みかけるA面はとにかく圧巻。静かなアコギをバックにしみじみ優しく歌う「きみは大きな存在」はディランの作品でも突出した素晴らしさを誇っている。B面の「彼女にあったら、よろしくと」「嵐からの隠れ場所」も聴く者の胸を打つ。掛け値なしの名盤。全米1位。
【ブルース・スプリングスティーン/明日なき暴走】
“ボス”ことブルースの3枚目のアルバムで出世作にして最高傑作。この作品で米国の路上の若者たちの代弁者となった。
ライブハウスで鍛え上げられたバンドの一体感と体力と迫力に満ちた演奏、そして抒情的かつ情熱的なブルースの歌詞。勝者への称賛はない。逆に夢を失った米国のありふれた若者や、現状と未来への不安と絶望を抱えた労働者らの“敗者”を歌うことによって、ブルースはロック界のアイコンとなった。
とてつもない疾走感に満ちた表題曲、そして優れたストーリーテリングによるオープニングの「涙のサンダーロード」や「裏通り」などは涙なしでは聴けない。壮大なスケールを誇るラストの「ジャングルランド」など名曲ばかりだ。このアルバムでブルースは米国の象徴となり、優れたアルバムを発表していく。2000年代以降のアルバムも傑作揃いなのでぜひ。全米3位。
【ポール・マッカートニー&ザ・ウイングス/ヴィーナス・アンド・マース】
ポール率いるウイングスが、とにかく徹底的にポップさを突き詰めた名盤。スキはみじんもない完璧なアルバムである。同じく大傑作である前作「バンド・オン・ザ・ラン」の勢いのまま制作された。
表題曲で幕を開けるアルバムはトータルアルバムの形式を取りながらも、これでもかというぐらいポールが才能を全開させた名曲群がズラリと並ぶ。捨て曲は1曲もない。表題曲から「ロック・ショー」への素晴らしい流れは胸を打つ。
とにかくポール独特の超人的なメロディーを誇る曲が並び「あの娘におせっかい」「ワインカラーの少女」などヒット曲以外にも「歌に愛を込めて」「幸せのアンサー」など名曲が続き、息つく間もない。繰り返すが本気になった時のポールのすごさを証明した一枚。全米1位。
【ザ・バンド/南十字星】
アメリカン・ロックの最高峰であるザ・バンドの実質的なラストアルバム。歴史的名作であるファースト「ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク」(1968年)、セカンド「ザ・バンド」(69年)と並ぶ傑作とされる。一時は低迷期もあったが、このアルバムでバンドは一念発起。フロントマンのロビー・ロバートソンが全曲を手掛けて、従来通り、古き良き米国に思いをはせる名盤を作り上げた。
冒頭の「禁断の木の実」「浮浪者のたまり場」「オフェリア」、そして原点に回帰したように米国の原風景や歴史を物語る歌詞が胸を打つ「アケイディアの流木」が並ぶA面は圧巻。B面にも「同じことさ!」など抒情性に満ちた名曲が続く。この翌年11月、バンドは「ラスト・ワルツ」として最終コンサートを行い解散。その後にアウトテイクスを集めた「アイランド」が発表された。もはやメンバー全員が故人となったが、ロック史に深く名を刻み込んだ希代の名グループだった。全米26位。
【レッド・ツェッペリン/フィジカル・グラフィティ】
世界的ハードロックバンド、ツェッペリン初の2枚組で、自らが設立したスワン・ソング・レーベル第1弾。とにかくスピードよりも音のヘヴィーネスとハードさを徹底的に追求したアルバムで、前作「聖なる館」をさらに進化させた名作となった。
ジミー・ペイジがギターをドライブさせ、ジョン・ボーナムの重厚なドラムがアルバムを通して鳴り響き、後にサンプリングにも多用された「カシミール」の迫力、エッジの利いたギターが印象的な「カスタード・パイ」や「トランプルド・アンダーフット」「シック・アゲイン」などは言葉にできない迫力に満ちている。
逆にC面では「ブロン・イ・アー」「ダウン・バイ・ザ・シーサイド」などアコースティックな曲が並び、バンドの幅広い音楽性を示す重要作となった。
このアルバムで満足することなくバンドはさらに高みを目指し、76年には最高傑作とされる「プレゼンス」の発表へと向かう。全米1位。
















