梶浦由記「starting the case:Rail Zeppelin」

 アニメのオープニングテーマ曲が、歌モノではなくインスト曲というパターンがたまにある。それはジャズだったりクラシックだったり、はたまたテクノだったりと、そのアニメの世界観に合わせてジャンルはさまざまだが、不思議なことにインストのテーマ曲には軒並み名曲が多い。

 今回ピックアップした「starting the case:Rail Zeppelin」は、2019年に放送されたアニメ「ロード・エルメロイⅡ世の事件簿―魔眼蒐集列車 Grace note―」のオープニング曲。作曲・編曲は劇伴全編を手がけた梶浦由記で、これも名曲と呼ぶしかないインスト曲だ。このアニメは魔術ミステリーで、メイン舞台となるロンドンの街並みや豪華な列車、そしてそこで起こる事件を音で彩る、まさに“テーマ曲”。

 バイオリンの流麗なメロディーが“主役”だが、力強いビートもあり、クラシック音楽かというと全く違う。これ、ジャンルに無理やり当てはめると何だろう? プログレッシブ・ロックにはこういうテイストの楽曲が結構あるが、一方でアルゼンチンタンゴの巨匠・ピアソラの晩年の作品と共通する印象も受ける。つまりジャンル分けなど意味を成さない、ワン・アンド・オンリーの梶浦サウンドということか。

 ちなみにこの曲に歌詞をつけ、ASCAが歌った「君が見た夢の物語」が同アニメの特別編ED曲として使われた。インストのままで十分に完成されていたが、言葉とASCAの歌声がプラスされると、これはこれでまた別の魅力を放つ曲として生まれ変わっている。興味のある方はこのボーカルバージョンもぜひ。