熊田茜音「まほうのかぜ」

 2021年に放送された「スーパーカブ」は、山梨県北杜市が舞台の青春アニメ。中古のホンダ「スーパーカブ」を手に入れた女子高校生が主人公の物語だ。

 オープニングを飾るのは、声優&シンガーの熊田茜音が歌う「まほうのかぜ」。アニメ主人公の心情を前向きな歌詞とサウンドで表現した、オープニング曲にふさわしい爽やかなナンバーである。作詞・きみコ、作曲&編曲・佐々木淳という布陣は、ちょっと前にこのコラムでも取り上げたnano.RIPEの2人。当然、この「まほうのかぜ」も、nano.RIPE自身の曲と共通した感触のサウンドを持った軽快なギターポップに仕上がっている。聴いていると自分もバイク(できるならスーパーカブで)に乗ってツーリングに出かけたくなってしまう。

 ところでこのアニメ、音楽ということではもう一つ聴きどころがある。各回ごとにBGMとして流れるクラシックのピアノ曲だ。「月の光」「亜麻色の髪の乙女」など6曲が使われたドビュッシーを筆頭に、サティ「ジムノペディ第1番」、シューマン「トロイメライ」、ラベル「亡き王女のためのパヴァーヌ」、ショパン「ノクターン第2番」など、超有名曲から渋めなところまで、これだけでピアノ曲のベスト・オブ・ベスト的なプレイリストが作れるほどの充実したラインアップ。

 これらの曲が、北杜市の穏やかな風景と、そこを走るスーパーカブを、極めて静かに、そして美しく彩っていた。毎回、次はどの曲が流れるのか楽しみにしていたクラシックファンもいるのではないだろうか。

 オープニング曲の“動”とBGMの“静”。そのコントラストも素晴らしいアニメだった。