「節酒って意味があるんだろうか?」

 過日、100歳で天寿をまっとうした身内の葬儀で、ふとそんなことを考えた。彼は若い頃から浴びるほど酒を飲み、典型的なチェーンスモーカーだった。最期もまさにピンピンコロリ。直前まで酒を飲み、家族に迷惑をかけることなく天国へと旅立った。彼の生きざまを目の当たりにし、「好き放題に飲んだほうが長生きするのかも」と思った。

 好き放題に飲むと言えば、イギリスの元首相ウィンストン・チャーチルの名を思い出す。彼は朝からウイスキー、昼にシャンパーニュ、夜はブランデーと終始酒三昧。朝の目覚めに薄めたスコッチを「ジュース」と呼び、ランチでは「ポル・ロジェ」のシャンパーニュを1本開け、夜も葉巻をくゆらせながら晩酌を楽しむ。

 戦時中でさえ酒を切らすことなく、外交にも「武器」として持参。どんな状況でも葉巻と酒を手放さず、豪快な飲酒スタイルで世界を相手に戦った。そんな生活では、さぞ短命だろうと思ったら享年90。彼が亡くなった1965年頃のイギリス男性の平均寿命が約68歳だったのを考えると、「ご長寿さん」確定である。

 そんな豪快なチャーチルだが、実はうつ傾向だったとも言われている。多忙故、ストレスも多かったからだろう。だが彼は負けじと、酒とユーモアでストレスをかわし、脳卒中を何度か乗り越え復活。最期まで自分らしく生きた。

 あくまで私見だが、結局のところ酒よりもストレスのほうがはるかに悪いのではないだろうか? アメリカ精神医学会(APA)の調査でも、「慢性ストレスは心疾患とがんのリスクを確実に高める」という報告もある。事実、慢性的なストレスはコルチゾールというホルモンを過剰に分泌させ、心臓病や糖尿病の引き金になる。

 こうしたことを考えると、ムリにガマンせず、酒を飲むこと、その時間を楽しむことこそが健康の本質のような気がする。健康食品より質のいい酒。禁酒より飲酒。ガマンの先にある長寿より、笑って飲んで生き抜く90年のほうが「うらやましい」と私は素直に思う。