女子バドミントン界の名コンビが、新たな道へと歩み出す。パリ五輪銅メダリストの〝シダマツ〟こと志田千陽(28)と松山奈未(27=ともに再春館製薬所)ペアが8日、熊本県内で会見を開き、8月の世界選手権(フランス・パリ)を最後にペアを解消することを発表した。初めてタッグを組んだのは2014年、当時高校生だった2人は11年間にわたり息の合ったプレーで世界の舞台を駆け抜け、ついに別れの時を迎える。

 会見ではともに涙を浮かべながら、これまでの歩みと、最後の大会に懸ける思いを語った。志田は「世界一になりたいという気持ちは変わらない」と現役続行を宣言。松山も「バドミントンへの情熱はまだ冷めていない」と話し、それぞれの未来へと一歩を踏み出す。

 シダマツペアが、最後の舞台に選んだのは世界の頂点を争うパリでの世界選手権だった。「五輪が終わってから、どこか満足できない思いがありました。やっぱり世界一になりたい――その気持ちはずっと持ち続けていました」と志田。ペア解消の発表は驚きとともに受け止められたが、その背景には何度も話し合いを重ねた末の決断があったという。

 松山は「パリ五輪に人生を懸けました。これ以上の努力はないと思えるほど準備しましたが、結果は銅メダル。悔しさとともに、どこか納得もあって…」と語り、「これ以上強くなれる自分を想像できなくなった」と正直な心境を吐露した。

 シダマツの歩みは、14年のジュニア合宿から始まった。日韓交流戦で意気投合し、初出場の国際大会で優勝。以降、全英オープン制覇、そして2024年のパリ五輪で銅メダル獲得という輝かしい実績を重ねてきた。

 だが、順風満帆ではなかった。「松山のけがや体調不良で難しい時期もあったけれど、志田さんは変わらず支えてくれた」と松山。「それでも立ち続けてくれたことに感謝している」と志田は返す。2人で乗り越えてきた日々の重みが、言葉の端々に宿る。

 志田は今後、五十嵐有紗(BIPROGY)と新たなペアを結成。「彼女のスピード感と勝負強さに可能性を感じた」と語り、「世界一を目指すという目標は、これからも変わらない」と言葉に力を込めた。松山も現役続行の意思を表明。「何度も引退を考えたけれど、やっぱり私はバドミントンが好き。また挑戦したい気持ちが湧いてきた」と前を向いた。

 国内最終戦は7月のジャパンオープン。シダマツとして最後の大会となる世界選手権に向けて、2人は「優勝という最高の形で締めくくりたい」と口をそろえる。別々の道を歩むことになっても、心の中には〝最強で最高のパートナー〟の存在が刻まれている。11年の軌跡を胸に、志田と松山は、それぞれの未来へと羽ばたいていく。