角界に衝撃だ。日本相撲協会は2日、宮城野親方(40=元横綱白鵬)が提出していた退職願を受理し、9日付で退職すると発表した。同親方が師匠を務めていた宮城野部屋は、弟子の不祥事により昨年4月に閉鎖。八角理事長(元横綱北勝海)は11月の九州場所後の部屋再開案を提示したが、退職の意思は変わらなかった。優勝45回を誇る大横綱が〝退場〟する異常事態。宮城野部屋OBは協会の一連の対応に不満を表明し、角界内からも同親方に同情する声が上がっている。

 宮城野部屋は、元幕内北青鵬による暴力問題の影響で昨年4月から閉鎖。宮城野親方は力士らとともに伊勢ヶ浜部屋へ転籍し、師匠の伊勢ヶ浜親方(元横綱旭富士)の下で親方としての再教育を受けていた。しかし、1年あまりが経過しても閉鎖措置は解除されず、退職を決断。八角理事長は11月の九州場所後の部屋再開を提案し、周囲も説得を試みたが、本人の意思は変わらなかった。

 優勝45回を誇る大横綱が退職する異常事態。その出発点となった部屋閉鎖の措置は、今でも関係者の間で「重すぎた」とする見方は根強い。宮城野親方は師匠としての地位剝奪とは別に、2階級降格と報酬減額の懲戒処分を受けているからだ。宮城野部屋OBは「もちろん、横綱(宮城野親方)にも非がないわけではない」と前置きした上で、次のように不満をあらわにする。

「これまでに横綱が、どれだけ相撲界に貢献してきたことか。協会が不祥事で傾いた時も、横綱は力士全員の先頭に立って支えてきた。(少年相撲大会)『白鵬杯』も最初は横綱が自腹を切って始めた大会。そこから今では関取が何人も誕生している。それで、この〝仕打ち〟はあり得ない。協会は横綱の良いところを見ず、悪いところばかりを見ている」

 現役時代には禁断の審判批判をはじめ、表彰式での万歳三唱や三本締め、元横綱日馬富士による傷害事件での現場同席など、数々の問題行動を起こしてきた。一方で、2010年2月に元横綱朝青龍が引退して以降、一人横綱として奮闘。角界が野球賭博問題や八百長問題に揺れたなか、地に落ちた大相撲人気の回復に大きく貢献した。

 宮城野親方が10年に立ち上げた「白鵬杯」は今年で15回目を数え、世界14の国と地域から約1100人が参加。過去の優勝者には新横綱大の里(二所ノ関)も名を連ねている。こうした功績があるだけに、角界内には宮城野親方への同情論も少なくない。ベテラン親方は「これは白鵬に対する〝いじめ〟だ」と断言。別の親方も「協会にとっては功労者。何とかして残す手だてはなかったものか…」と表情を曇らせた。

 この日、宮城野親方は関係者を通じて「これまで相撲道一筋に歩んでまいりました力士としての人生は、多くの皆さまの温かいご支援とご指導があってこそ成し得たものであり、心より深く感謝申し上げます。国内外を問わず、相撲の価値と魅力を新たな形で伝え、相撲の未来を世界中の人々とともに築いていく活動に力を注いでまいります」とコメントを発表した。

 18年に優勝22回の貴乃花親方(当時)が退職したのに続き、またしても角界から大横綱が流出した格好。大相撲に新たな〝黒歴史〟が刻まれた。