「術後、5日間はお酒を飲まないでくださいね」

 過日、眼瞼皮膚弛緩症の手術を受けた際、ドクターからそう告げられた。普段、家飲みはほとんどしないクセに、禁酒を言い渡されるとなぜか飲みたくてたまらなくなる。術後3日目にしてガマンならず、誓いを破ってチューハイ、それもロング缶を1本飲んでしまった。

 翌朝、鏡を見て小さな悲鳴を上げた。まぶたと涙袋がパンパンに腫れ上がり、数字の3のような目になっていたのだ。その顔は「ドラえもん」ののび太がメガネを取った時のよう。少しでもきれいになろうと手術したのに、たった1本のチューハイで台無しに(涙)。しばらくして腫れは引いたが、あれほど目が腫れたことは今のところない。

 このように他者から禁止事項や制限を言い渡されると、かえって興味が湧き、実行してしまう心理現象を「カリギュラ効果」と呼ぶ。目を覆うような残虐シーンが多いことから公開禁止になった映画「カリギュラ」(1980年)が、それによって大ヒットしたことが由来とされている。昔話でも「浦島太郎」や「鶴の恩返し」でもカリギュラ効果が見て取れるよう、「ダメ」と言われると反発してしまうのは、深層心理を揺さぶられるからかもしれない。

 実際、自分が経験して納得したのだが、酒飲みに「飲むな」と言うのは「飲め」と許可しているようなもの。今、アルコール依存症の治療でも軽症の人は禁酒ではなく、減酒外来でセリンクロという薬を使って減酒させることからスタートする理由が良く分かった。それを踏まえた上で、酒を禁止事項にせず、「飲んでもいいけど、あくまで自己責任」とゆるい感じにしておけば、飲みたくてたまらない衝動から解放される。強い圧力で押さえつけるより、適度な自由を与えておけば、人間そう無茶はしないのだ。