元大関の完全復活はなるか――。大相撲春場所8日目(16日、大阪府立体育会館)、大関経験者の三段目朝乃山(31=高砂)が三段目小城ノ浜(30=出羽海)を寄り切って4連勝。無傷で勝ち越しを決めた。昨年7月の名古屋場所で左ヒザを負傷し、手術を受けて長期休場。幕内から2度目の三段目転落となった。元大関琴奨菊の秀ノ山親方(41=本紙評論家)が、関取復帰を目指す朝乃山の〝現在地〟を分析した。
朝乃山は小城ノ浜を力強く寄り切って、無傷の4連勝。本場所で1年ぶりの勝ち越しを決めた取組後は「自分の中では通過点。ここから全勝同士で当たっていくので、大事な勝負」と気持ちを引き締めた。ここまでの相撲内容については「前に出る気持ちで動けている」としながらも「初日だけではなくて4番、緊張しています」と本音も漏らした。
大関時代に不祥事で6場所出場停止となり、三段目まで転落。一時は小結まで番付を戻したが、昨年の名古屋場所で左ヒザの前十字靭帯を損傷し、手術を受けた。4場所連続の休場明けとなる今場所は、再び三段目から再出発。大関経験者なら今の番付では勝って当たり前と見られがちだが、実際の勝負事はそこまで甘くない。
秀ノ山親方は「まず稽古場と本場所では、全く違うということ。いくら稽古場で関取衆や幕下を相手にいい相撲を取っても、本場所の一番は緊張感が違うし、体にかかる負荷も違う。今回の朝乃山の場合は、ケガの怖さもある」と指摘する。さらに、元大関の実力者が幕下以下の力士と本場所で相撲を取るにあたっては、独特の難しさがあるという。
秀ノ山親方は「幕内同士なら目いっぱいに体をぶつけていって反応で相撲を取れるけど、力の差がある幕下以下が相手となると、かえって気を使う。自分の勢いが余って墓穴を掘ることもあるから。互いに手の内を知る幕内と違って、幕下以下は何をしてくるか分からない。それに〝この番付では負けられない〟という重圧もある。元大関だからといって、楽な気持ちで土俵に上がれるということはない」と力説した。
実際、朝乃山は前回の転落時に三段目で全勝優勝したものの、幕下の2場所は、いずれも1敗して優勝を逃した。横綱照ノ富士も大関時代に両ヒザの故障などで序二段まで転落。復帰場所こそ全勝優勝したが、三段目と幕下昇進直後の2場所は全勝できず、優勝を逃している。大関経験者だからといって、最短での関取復帰は決して簡単な道のりではない。
それでも、ファンの期待は〝横綱級〟。この日も土俵上では最も大きい声援を受けた。朝乃山は「今場所は復帰の場所。これからどんどん本場所を重ねて(関取として)15日間相撲を取れるようになりたい」と意気込む。秀ノ山親方も「今の番付での勝ち越しに満足せず、さらに上を目指す姿勢は評価できる。相撲内容からも、幕内復帰を目指して準備してきた跡がうかがえる。もう一回、鍛え直して幕内で活躍する姿を見せてほしい」と期待を寄せた。
朝乃山が最速2場所で関取復帰を果たすためには、全勝で連続Vが最低条件。まずは今場所の残り3番で、真価が問われることになりそうだ。













