大相撲春場所は3月9日、大阪府立体育会館で初日を迎える。1月の初場所後には新横綱豊昇龍(25=立浪)が誕生。番付の頂点を争った大の里(24=二所ノ関)、琴桜(27=佐渡ヶ嶽)の両大関とは明暗が分かれた。元大関琴奨菊の秀ノ山親方(41=本紙評論家)による連載「がぶりトーク」では、春場所を展望。新横綱と大関陣の間にある「明確な差」を指摘した上で、大の里と琴桜には一層の奮起を求めた。

【秀ノ山親方・がぶりトーク】読者のみなさん、こんにちは! 春場所の主役は、もちろん新横綱の豊昇龍です。1月の初場所は千秋楽に逆転優勝を果たし、横綱の地位をたぐり寄せました。この2場所は安易にまわしを取りにいったり、投げに頼ることがなくなり、積極的に前に出る攻めの相撲が光っていた。新横綱として臨む今場所も、優勝争いを引っ張っていく存在になると思います。

 一方で、先場所は琴桜と大の里の両大関が物足りなかった。豊昇龍と最後まで優勝を争ったのは、金峰山と王鵬。いずれも平幕の力士で、そこに大関が絡むことはありませんでした。初場所が始まる前は、ファンのみなさんも琴桜の綱取りに期待していたはず。大の里にしても、大関に上がった時には多くの人が次の横綱だと予感していたのではないでしょうか。

 体格的な部分でも恵まれている2人が、結果的に豊昇龍に先を越される格好になった。明暗が分かれた大きな要因の一つは、精神面にあるとみています。琴桜と大の里には、黒星を引きずってしまうようなところがある。豊昇龍は負けて落ち込むのではなく〝次は見とけよ!〟とエネルギーに変えていくことができる。そこに違いを感じるんですよ。

 昨年11月の九州場所も、そうでした。琴桜との相星決戦で敗れた豊昇龍は、気落ちするどころか「やり返す!!」と闘志を燃やしていた。実際、初場所前の稽古でも、リベンジするために入念に準備していた跡がうかがえる。悔しい思いがあるからこそ、苦しいことにも耐えられるんですね。初場所中に連敗しても、絶対にあきらめないという姿勢を貫いていました。

 逆に、先場所の琴桜は精神的な部分で弱さが出た。昨年は年間最多勝で誰よりも安定していた力士が、5勝10敗と大崩れ。初めて経験する綱取りの重圧で、本来の力を発揮できませんでした。場所前の準備という点でも、豊昇龍に比べれば足りていなかったのではないか。いま一度、稽古内容や本番へ向けた気持ちのつくり方などを見つめ直す必要があると思います。

 大の里は10勝5敗で2桁の白星を挙げたけれど、存在感がなかった。琴桜もそうでしたが、終盤に好調の金峰山と当てられて完敗。番付の違いを示すことができませんでした。下位の力士に対しては、壁となってはね返すことも大関の役割。逆に勢いづかせてしまうようでは、上は目指せない。改めて、地位の重みを感じながら取り組んでもらいたいですね。

 もちろん、琴桜と大の里は、豊昇龍が先に横綱になったことで思うところがあるはず。今度は2人の大関が、悔しさをぶつける番。横綱と大関で賜杯を争って、最後に直接対決で雌雄を決するような展開を期待したいですね。それではまた!