「ダイダラボッチ」とは日本各地に伝説を残す巨人の名前である。ダイダラボッチという名は妖怪っぽいが、その伝承を知ると神様のような存在だったのではないかと思わされる。

 各地に根付いている伝承らしく、さまざまな呼び名が残っている。「でいだらぼっち」「だいらんぼう」「デイラボッチ」「タイタンボウ」「おおきいぼちゃぼちゃ」…。枚挙にいとまがない。

 民俗学者の柳田國男によると「大太郎法師(だいだろうほうし)」が語源で、一寸法師の逆を意味したのではないかとの説を述べている。

 ダイダラボッチは、その大きな体を使って山や湖などの地形を作るのだ。国造りの神々の逸話が支配層ではなく、民間伝承として残ったものがダイダラボッチなのではないかという説が主流だ。

 その偉業を見てみると日本の象徴である富士山を作ったのもダイダラボッチなのである。その際に多くの土を使ったために甲州は盆地になったと言われている。

 他にはダイダラボッチが転んで手をついた場所が浜名湖になったとか、八ヶ岳の頭を蹴飛ばしたから八ヶ岳は山頂がデコボコだとか、逸話も枚挙にいとまがない。日本の地形に影響を与えた巨人として、ダイダラボッチは各地で愛されているのだ。

 そのダイダラボッチ、実は名前を冠する生物が実在する。「ヨコエビ」だ。ヨコエビと聞いてもピンとこない方も多いかもしれないが、エビのような甲殻類の一種で体の側面が平たいため横になっていることが多く、ヨコエビという名前がついた。

 実際にはエビの仲間ではなく、種類が多く、ものすごい深海に生息していることや陸にもいることで有名だ。ヨコエビは魚の糞や堆積した落ち葉を分解して自らが魚の餌になるため、生態系にとって重要な存在なのだ。

 ヨコエビは1ミリ程度のものから海底では2〜3センチと大きなものもいる。ダイダラボッチと言われる種類は同種でも最大で、30センチ近くにもなる個体も確認されている。触覚の長さや色の白さと合わさって非常に気味が悪い。

 海外ではアリケラギガンティアと言われ、ダイダラボッチは和名として正式に認められたものだ。これは理由は分からないが1994年の提唱から根付いている。

 ちなみにヨコエビの怖い話では、オーストラリアで少年が海に足をつけて音楽を聴いていて、海から上がったら足が血だらけになっていた事件があった。

 少年の父親は現場の海に肉片を入れてみると、2ミリ程度の大きさのヨコエビが数千匹も食いついて血を吸っていたのだという。国を作ったダイダラボッチと違って恐ろしい話だ。